これからの営業に求められているのは、単なる商品やサービスの販売にとどまりません。流通パートナーとの戦略的な協働や、お客様の価値創造、共感を生み出す取り組みこそが求められているのです。そのためには、個々の営業のスキルやマインド、流通の仕組みや取引制度、営業組織を変えていくことが必要になります。では、いかにして変えていくか? そのために必要な考え方やノウハウがまとめられた『営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ』宮下建治(ダイヤモンド社)から抜粋してみました。

できる営業マンは5つのステップで話す
P&G時代、マーケティングの担当者が営業の仕事に関わると「説得的販売話法」をよく紹介していましたが、「これはいい」とみんな社内のプレゼンなどにも使っていました。このステップで、いろいろな説明がうまくできてしまうからです。
ここでは、衣料用洗剤(架空の新ブランド「エコクリーンプラス」)の商談を例に、具体的なステップと、その詳細を解説してみましょう。
1.状況要約
商談の目的、背景を伝え、提案前にバイヤーの関心を惹きつけ、心の窓を開ける
事前に調査した、あるいは過去の商談で入手した顧客のビジネス背景、マーケット状況、競合環境などの情報から、顧客の方針や顧客が直面している課題やニーズを把握、それに基づいた質問を行います。
また、状況に応じて後に解説する「SPIN話法」の状況質問、問題質問、示唆質問をして、顧客の認識と自分の理解が一致しているかを確認します。
どんな状況に満足し、不満足なのか、現状をしっかり理解し、要約することです。このステップがうまくいくと、商談はとてもスムーズに進むことが少なくありません。その意味で、最も重要なステップといえます。
<トーク例>
●最近、消費者の洗濯に対する意識が変化していると感じていらっしゃいませんか? 特に、時短や節水への関心が高まっているようです。
●御社の洗剤売り場では、時短に配慮した製品の需要が増加傾向にあると、いただいたPOSデータの分析でわかりました。この傾向についてどのようにお考えですか?
●前回の打ち合わせで、御社の顧客層が高品質な洗剤を求めているとのことでしたが、その後の検討状況はいかがでしょうか?
一般的に新製品を出すときには、「今、市場はこう伸びています。その理由は、こういった新しい消費者ニーズが生まれ、そこにマッチする商品が必要だからです。この商品も、そのニーズを満たすような商品として開発できました」というアピールをします。
新商品に限らず、こんな提案もあります。
「果物はこの10年、消費が伸びていませんが、キウイは伸びています。4月から7月まではよく売れていますが、8月以降は国産の桃やスイカやブドウが出てきて売り場が縮小されてしまう。利益に貢献しているキウイにもっと注目してほしい。8月に利益を取るためにキウイを売りましょう」
2.アイデアの提案
得意先のニーズ・課題に焦点を当てた提案をする
顧客のニーズや課題に直接対応する解決策を提案します。状況要約はわかった、ではビジネスの課題を解決するために、どんなことができるのか。今日はこんなアイデアがあります、という提案をします。
ここでは、提案がシンプルで明確であることが重要です。バイヤーに「この提案が貴社の問題解決にどう結びついているか」を明確に説明します。
また、状況に応じて提案内容が顧客のビジネスニーズと一致しているかを「SPIN話法」の示唆質問・解決質問で確認します。
<トーク例>
●そこで、当社が開発した画期的な洗浄力を持つ新洗剤「エコクリーンプラス」をご提案させていただきます。少量で驚くほどの洗浄力を発揮し、環境にも優しい製品です。
●この新製品は、従来の洗剤と比べて半分の量で同等以上の洗浄力を実現します。御社の顧客満足度向上に大きく貢献できると確信しています。
●「エコクリーンプラス」は、洗浄力だけでなく、柔軟効果も兼ね備えています。これにより、顧客の洗濯プロセスを簡略化し、時短ニーズにも応えられます。
3.実現方法の説明
プランの実現可能性に対する信用を高める
提案を実現するための具体的なプロセスを説明します。先にも触れていますが、バイヤーは具体性がない提案を嫌います。ここでは、提案内容がどのように機能し、問題解決につながるかを明確にすることが重要です。
この説明により、バイヤーは提案が現実的かつ実行可能であることを理解し、安心感を持つことができます。特に新製品に、バイヤーはリスクを感じます。今までトライしたことがないものであればあるほど、実現可能性の説明は重要です。
また、バイヤーからの質問や懸念を積極的に受け入れ、解消する姿勢が求められます。機能の説明が複雑にならざるを得ない場合は、バイヤーに対し、デモンストレーションや商品サンプルを確認してもらい、理解を深めてもらいます。
<トーク例>
●新製品導入にあたり、当社の営業企画部が御社専用の販促資材を作成いたします。また当社のラウンダーが効果的な売り場作りをサポートさせていただきます。
●また、店頭でのサンプリングイベントを企画しており、顧客に直接製品の良さを体験していただくことで、認知度と購買意欲の向上が期待できます。
●さらに、御社のECサイトでの販売促進策として、動画コンテンツもご用意しています。製品の特徴や使用方法をわかりやすく説明し、オンライン購入やネットスーパー(店舗ピックアップ)の促進も図ります。
新商品ということで不安がありそうなら、こんな説明も有効です。
●このくらいの価格が妥当だと思いますが、価格弾性値で調べてきました。
●購入意欲に関して、これだけの数字が出てきています。
●テレビのCMを、発売後最初の週末から4週間で1500入れます。
●こんな面白い消費者プロモーションを予定しています。