「会社の120%成長を喜んでいると、キャリアを失敗するかもしれません」
そう語るのは、転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さん。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験を持つヘッドハンターであり、「現場」と「経営者」の両方の視点で、「圧倒的に活躍する人たち」と関わってきました。
その高野さんがベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめた書籍『ベンチャーの作法』が刊行。発売たちまち重版し、“きれいごと”抜きの仕事論に、社員からは「ベンチャーにかぎらず全ての組織で役立つ!」、経営者からは「よくぞここまで書いてくれた!」と、SNSでも多数の感想が投稿されるなど異例の反響となっています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「企業の成長度の見かた」についてお伝えします。

「キャリアで失敗する人」は自社が120%成長したことに喜ぶ。では、優秀な人はどう考える?Photo: Adobe Stock

「120%成長」という伸び悩み

 以前はイケイケムードだった会社も、業績が伸び悩み始めたら転職を考えてもいいかもしれません。

 前年対比で98%になった、というレベルの話ではありません。
 成長率が150%から120%になったレベルでも伸び悩みと言えます。

「成長しているベンチャー」の基準とは?

「え、充分に伸びてるじゃん?」

 そう思ったかもしれませんね。
 未上場の大手企業が「成長率は120%でした」と言うならすごいですが、ベンチャーだと「これはきついな……」と、投資家である私は考えてしまいます。

 投資家から「成長中のベンチャー」として見られるには、毎年1.5倍で成長するくらいの基準をクリアしなくてはいけないからです。
 成長著しいことが前提であるベンチャーは、それくらい厳しい目で投資家から見られているのです。

「5年で72倍」という言葉の意味

「T2D3」という言葉をご存じでしょうか。

 SaaS企業の業績を見る指標のひとつであり、「Triple, Triple, Double, Double, Double(トリプル2回、ダブル3回)」の略称です。その企業の売上額が前年を基準に毎年3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と上昇しているかどうか、という基準で判断する指標です。

 つまりベンチャーに求められる成長率は、5年で「72倍」です。

 年間売上10億円くらいまでは、この指標をクリアしているような企業が投資市場では評価されます。
 こう聞くと、「120%成長」はベンチャーにとってまったく順調ではないことがわかると思います。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)