およそ8万人の子どもが
“担任がいない”状況に
文科省は、2021年に各自治体の4月始業日と5月1日の教員不足数に関する全国調査を行った。調査対象となる学校種は、公立の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校であり、調査対象となる教員は、校長以下講師まですべての職位を含むとともに、雇用形態としても「正規教員、臨時的任用教員、非常勤講師(会計年度任用職員)、再任用教員(フルタイム・短時間)をすべて含む」とされていた。
そして、この調査報告書では「教師不足」とは「臨時的任用教員等の講師の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市等の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず欠員が生じる状態」と定義されていた(文部科学省「「教師不足」に関する実態調査」2022年)。調査結果によれば、2021年度4月始業日での不足が全国で2558人だった(うち小中の不足は2086人)。

佐久間亜紀 著
不足を埋めようと1カ月間教員を探して配置してもなお、5月1日時点で2065人が不足していたという。2558人という4月の不足数は、学校に配置されている教員定数全体に占める割合としてみると、0.31パーセントにあたると、この報告書には記されている。
さて、0.31パーセントという数字を、大きいとみればよいのか、小さいとみればよいのか。文科省の記者会見の会場では、記者たちの間に、不足が深刻なのかどうかよくわからない……といった当惑した空気が流れたという。
不足が「大きい」か「小さい」かという評価は、何かを基準にして比較する見方になる。ここでは、まず子ども目線で考えてみよう。例えば不足教員2558人の背後に、何人の子どもと保護者がいるだろうか。
1学級に約30人の児童・生徒がいると仮定すれば、全国でおよそ7万人から8万人の子どもたちが、担任の先生がいないという状況を経験させられていたことになる。その背後には、それより多くの保護者がいる。私にはこの数が決して小さいとは思えない。