「妊娠してしまいました」
と言って泣き崩れる女教師
苦しんでいるのは奈々子先生だけではない。産育休や病休に入る方の教員も、同じようにしんどい思いをしている。
小学校教員をしている真美先生(仮名)は、念願叶ってようやく妊娠したという。数年前に結婚し、ずっと子どもが欲しいと思っていたけれど、なかなか授からずにいた真美先生は、初めての「おめでた」が本当に嬉しくて家族で抱き合って喜んだ、と私に伝えてきてくれた。
「でも、気が重いんです。産休代替の先生が見つからない時代なので、いまの校長は絶対にいい顔をしないはずなんです……」
案の定、校長室で報告すると、校長は言葉では「そうですか、おめでとう」と言いつつ、その表情にお祝いの色はまったく感じられなかったそうだ。そして「替わりの先生が見つからないかもしれないから、産休に入るのはできるだけ遅くしてほしい」と言われたという。私からは「学校は替わりの誰かが回してくれるけど、お腹の赤ちゃんにはお母さんしかいないから、仕事は二の次にして赤ちゃんのことを考えて」と伝えた。
私自身も、子どもを授からなくて苦悩した時期が長かったから、真美先生とご家族の喜びの気持ちは痛いほどよくわかるし、もはや産休をとる以外の選択肢はない。それでも、帯状疱疹ができてしまった奈々子先生の顔を思い浮かべながら、「学校側も大変だろうな」と、お祝いしたい気持ちにうっすらと影が差してしまう。
別の小学校で教員をしている慎二先生(仮名)も、「僕の学校でも、前の年に結婚した同僚が職員朝会で、妊娠してしまいました、申し訳ありません、とだけ言って、泣き崩れてしまったんですよ」と教えてくれた。
「新しい命を身ごもるなんて、とても喜ばしいことだし、本来ならみんなで歓声をあげて、おめでとう!ってお祝いする瞬間になるはずなのに、なんだか本当にいたたまれなかった。
産育休をとる先生に何の罪もないのは、みんなよーくわかっているんです。でも、それでも、現実問題として産育休代替の先生が見つからなかったらどうなってしまうのか、学校の子どもたちはどうなるのか、不安になっちゃうのも事実なんです。そう感じてしまう自分が本当に情けないし、やるせない」と語る。