マンションの価格高騰が連日ニュースを賑わせる昨今、その影で、もう一つの重大なコスト上昇が見過ごされている。それは、購入後に毎月発生する管理費や修繕積立金といった「維持費」だ。「背伸びしてでもローンを組んで」など、余裕のない家計で購入を考えている人々にとって、この“見過ごしていたコスト”の上昇は、将来の家計を圧迫する深刻なリスクとなりつつある。住宅ローン金利の上昇以上に、家計へのインパクトが大きくなる可能性をはらむマンション維持費の高騰の背景と、今から備えるべきことについて解説する。(鈴木豪、ダイヤモンド・ザイ編集部)
新築マンションの維持費は
月6~10万円の時代へ

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かつて、ファミリー向けの70平方メートルマンションであれば、管理費と修繕積立金はそれぞれ月額1万円程度、毎月の維持費は合計で2万円台というのが一般的なイメージであった。しかし、その常識はもはや通用しない。近年の新築マンションでは、毎月の維持費が1平方メートルあたり600円~1000円以上に設定される物件も珍しくないのだ。
2025年に首都圏で販売された主要マンションの維持費を調査した、マンションブロガーの2LDK氏によると、例えば横浜のみなとみらいを臨むタワーマンション「ブランズタワー横浜北仲」の場合、そのランニングコストは1平方メートルあたり1191円と試算されている(下表参照)。仮にファミリー向けの70平方メートルの住戸を購入した場合、毎月約8万3000円もの出費となる。これに固定資産税(年間約10~20万円、都市計画税含む)と火災・地震保険料(年間約4万円)を月割りにした約2万円、さらに駐車場を借りれば月数万円が上乗せされる。つまり、住宅ローンの返済とは別に、月々10万円を超える維持費がかかる計算なのである。もはや、もう1部屋借りられるレベルの維持費なのだ。
ちなみに、下表で取り上げた上位2物件は定期借地権で借地料や解体準備金が上乗せされるというハンデがあるため、毎月の1平方メートルあたりの単価が1000円を超えてしまったという側面もある(その代わり土地分には固定資産税と都市計画税はかからない)。しかし、新築タワマンでは管理費が比較的安い物件でも、1平方メートルあたり約600円だ。仮に70平方メートルの物件なら税金や保険料込みで月額6万円以上、駐車場を利用するなら月額10万円を想定する必要があるのだ。
新築マンションの維持費が高騰する
驚愕の二つの要因とは
なぜ、これほどまでに新築マンションの維持費は高騰しているのだろうか。まず管理費が高額化している背景として、二つの大きな要因がある。
一つは、物価や人件費の上昇だ。特にマンション管理に不可欠な管理人や清掃員の人手不足は深刻化している。かつては管理人の仕事は定年退職後のシニア層の受け皿となっていたが、雇用の延長義務化や他分野でもシニア層の求人が増えたことで、応募者が激減。人材確保のために人件費は上昇の一途をたどっている。
もう一つの要因は、マンション自体の価格高騰と、それに伴うニーズの変化だ。マンション価格が上がれば、購入者はそれに見合った質の高い管理やサービスを期待する。コンシェルジュサービスや豪華な共用施設の維持には、相応のコストがかかるのは当然だ。
加えて、業界の構造的な問題もある。
それは、既存のマンションは契約期間も長いこともあり、管理費を簡単に値上げできないことだ。そのため、管理会社は会社全体として利益を確保するために、新規物件の管理費を高く設定せざるを得ないという裏事情だ。
つまり、既存物件で上げられない分のコストが、新築マンションの価格に転嫁されているという側面もあるのである。
もちろん、既存物件も無関係ではいられない。管理会社が赤字を放置するはずはなく、契約更新のタイミングなどで、人件費や物価の高騰を理由とした値上げ提案が本格化していくことは避けられないだろう。