
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第10回(2025年10月10日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
“明治の当たり前”に疑問を感じる聡明さ
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)、2回目のお見合い。「粗茶でございます」と総髪の髷(まげ)の銀二郎(寛一郎)にお茶を出す。寛一郎は名優・佐藤浩市の息子。見合い相手の顔を見ようとドキドキしている初々しさが伝わってくる演技。ところがトキは顔を見せない。
このまま祝言を迎えることになるのがこわいと言うトキ。この場で顔をちらと拝見した人と一緒に暮らしていくことに疑問を呈する。トキは単なる、“この時代の人がそういうものと思っていたこと”に疑問を感じる聡明さを持った人物であった。
困惑する司之介(岡部たかし)たち男性陣だが、銀二郎は「わかりました」と「わたしとお話しませんか」とトキを誘う。彼もまた新しい感覚の持ち主のようだ。髷だけど。
トキと銀二郎、なんだかいい感じじゃないかと思うが、そのあとのいつものタイトルバックがヘブン(トミー・バストウ)との幸せ2ショットばかりなので、気持ちの持って行き場がない。
タイトルバック明け。散歩するふたり。
「右に曲がってもええでしょうか」といちいちトキにお伺いを立てる銀二郎。おそらくこういうことも当時では珍しくないだろうか。男性のすることに女性が従っていたのではないかと想像する。
雨清水家で待っている司之介は、心配で心配で柱をガシガシ押す。柱が折れたらどうするのか。雨清水家はそんなことではびくともしないのか。
彼がやっているのは相撲の稽古のひとつ「鉄砲」。フミ(池脇千鶴)と勘右衛門(小日向文世)まではじめて、なんともシュールな一場面となった。3人がやったらさすがの雨清水家も危険ではないか。
そして、銀二郎がトキを連れて行ったのは――。