パタゴニアから
学んだこと
鳥居:豊かな自然の中で、歴史的に地域とのつながりや社員を大切にされてきたのですね。すでにそうした良き企業文化をもつ貴社が、B Corp認証取得にいたったのはなぜですか。
サミュエルズ:私たちが自ら思って実践していることが間違いないかを確認するために、第三者の評価を受けたかったのです。完全な評価を受けるだけでも、B Corp認証には大きな価値があります。また、B Corp認証を通じて、それまでの自分たちとは異なる視点で自らを振り返りたいという考えもありました。
例えば、ブランドやリーダーシップの観点で私が尊敬しているB Corp認証企業のパタゴニアから、インスピレーションを得たいと思いました。パタゴニアは常に革新を続けているアウトドア用品企業です。製品の品質において彼らは妥協しません。あらゆる活動の中心にミッション(「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」)を置いています。彼らは、私たちメーカーズマークで何ができるかについて、違った視点で考えるきっかけを与えてくれました。
鳥居:B Corp認証のための自己評価や審査を通して何を得ましたか?
サミュエルズ:私たちは従前からの事業運営のままで、B Corp認証を取得しました。ただし評価後、さらなる改善に向けた道筋を見出すことにB Corp認証基準は役に立ちました。 他の B Corp企業やそのリーダーと交流することで、良い刺激が得られます。私たちは(2021年の初回に続いて)24年に2回目の評価を完了し、有意義な進歩を遂げたと思っていました。
しかし、パタゴニアのグライド・パス(事業方針を一定のルールにもとづき見直していくこと)を知って刺激を受けました。彼らが過去10年間で達成した成功は実に注目に値するものです。彼らが達成できたことで、私たちが考えもしなかったことを知りたかったので、私はパタゴニアに連絡を取りました。
特に私が気に入っているのは、社員全員がミッションに対して熱心に取り組んでいるということです。それが重要であることを彼らは知っているのです。今、私たちはそれを日々のあらゆる活動の中心に置いています。
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鳥居:貴社が初回の認証から2度目の認証に至るまでに大きく改善したのは、どういう点ですか。
サミュエルズ:1つには、利益を社会に還元することです。当社は寄付などにより多くの社会的組織を積極的に支援し、経済的に大きく貢献しています。
また、持続可能性についても、さらに注力しています。当社には57か所のバーボン熟成庫すべてのエネルギーを太陽光発電でまかなっています。昨年には太陽光発電パネルを増強し、すべてのホスピタリティ施設のエネルギーを補っています。
私たちが住む地域にはリサイクルシステムがなかったので、独自のシステムを作りました。空になったガラスボトルを回収し、粉砕し、郡に寄付します。それは道路の材料に使われます。 業務においては、水の使用量を削減する取り組みを推進しました。
鳥居:B Corp認証を契機に、それまで気づかなかったけれど、重要だとわかったことはありますか?
サミュエルズ:B Corpが良いと思うところは、包括的であることです。今日多くの人が重視する持続可能性は無論のこと、社員やコミュニティなどサプライチェーン全体に関わることを総合的に考慮しています。それは私たちにとって大きなチャンスだと考えています。私たちがビジネスで直接関わる栽培農家を超えて、5万エーカーの農地、農業全体にまで関心が及ぶようになりました。リジェネラティブ(環境再生型)農業についても、私たちはリーダーシップを発揮しています。
消費者のB Corpに対する認知度や関心も高まっています。私たちの蒸溜所を訪れてくれるゲストとのコミュニケーションでそれを実感します。彼らが注目するのは、私たちの手作りのバーボンの品質だけでなく、私たちの文化にも興味を示してくれます。例えば、ケンタッキー州で2番目に大きな現代アートのコレクションで、小さな村のような美しい庭園に芸術作品が配置されています。彼らの笑顔と共にその意見を聞き、私たりはより良いものにすることに熱心に取り組んでいます。