コロナ禍の3年間で
「老害脳」予備軍が増加

 本記事における仮説は、「老害脳」を克服しつつ、「老害脳」の仕組みを知ることによって、将来の認知症予防につながり、世の中を良くしていけるのではないか、ということです。そして私は、コロナ禍が終わりつつある今だからこそ、老害問題を共有するいい機会になるのではないかとも思っています。

 実は、新型コロナウイルスに感染した人の中で、認知機能障害に苦しむ人が急に増えており、脳の老化や神経萎縮が加速されるというエビデンスが示されています。

 ケース・ウェスタン・リザーブ医科大学からの報告では、アルツハイマー型認知症と診断されたことのない、米国の65歳以上の成人620万人の匿名の電子カルテを分析した結果、認知症の発症が1.5~1.8倍に増加していたとしています。

 これらの事実が示すことは、認知症を発症しなくとも、認知機能が低下している認知症予備軍や「老害脳」の状況が、コロナ禍の3年間で拡大してしまったということです。

 コロナ禍で、急速に一般化したリモートワークは、日中の座っている時間を増やし、思考力や記憶力を低下させました。それは結果的に「老害脳」予備軍だった人々の状況に悪く作用したのではないかと考えられます。

「身近な老害」が温存される日本社会に特有の事情『老害脳』(加藤俊徳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 コロナ禍以前を思い出してください。社長も一般社員も、ベテランも若手も、一応毎日出社して顔を合わせ、打ち合わせをしたり雑談をしたりしていたでしょう。

 そこにコロナ禍の荒波がやってきて、最初はしかたなくリモートが導入されました。しかし、特に若手やITに抵抗のない人を中心に、この働き方は自分にマッチしていてとてもありがたい方法だと評価され始めました。

 もしも自宅で働いたところで生み出す価値が同じなのであれば、通勤時間や家事・育児との兼ね合い、プライベートとのバランスなどを考えれば断然リモートワークのほうが快適で、疲労も減ります。人によっては、むしろリモートワークのほうがより価値を発揮しやすいと感じているかもしれません。最近は、リモートワークがどこまで許容されるかも、若い方たちの仕事選びの大きな要素となっています。