
「日本人ファースト」に端を発して議論が過熱している外国人労働者の受け入れ問題。日本が海外の移民政策から学べることは多い。ドイツは移民の誘致と同時に、解雇に関する規制緩和など一大改革を行い、経済成長率を高めた。スウェーデンは約500万円を支払う代わりに、社会になじめなかった外国人に帰国を求めている。シンガポールは、「自国にプラスになる外国人」の受け入れを明示。社会に順応できる移民を選別し、慎重に管理する方針だ。日本は外国人をどのように受け入れ、社会と経済の活力アップにつなげるべきだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
現実問題として外国人の力を借りずに
超少子高齢化の日本の経済・社会は回るのか
思い起こせばかなり以前から、わが国で多くの外国人労働者の姿を目にすることがあった。例えば筆者が10年以上前、東京・新橋のそば屋に行ったとき、まだ日本語がおぼつかない外国人が注文を取りに来たことを鮮明に覚えている。そのころから、わが国の人口減少問題が深刻であることを感じていた。
令和の時代に進み、人口減少の問題は一段と深刻さを増している。政府は、企業に70歳までの就業機会を提供する努力義務を課したが、人手不足の解消は一朝一夕にいかない。人口減少・人手不足の問題の解決に、外国人の受け入れに関する議論は待ったなしだ。
1990年代から、海外の労働者や高度人材をどのように受け入れればいいのか議論はあった。ただ、同質性が高いわが国の社会特性上、外国人受け入れ議論の推進は容易ではない。外国人との共生に慣れていない、わが国社会が移民問題を解決することは容易ではないだろう。
一方、少子高齢化の進展で、外国人の力を借りずに経済・社会を円滑に運営することは現実的に難しくなっている。国際社会の中でのわが国の地盤沈下を避けるためにも、移民の受け入れは避けられないだろう。海外の事例に学びながら、わが国独自の解決策を模索することが必要だ。
米国は建国当時から、さまざまなバックグラウンド、価値観を持つ人を受け入れ、成功のチャンスを与えた。第2次世界大戦後のドイツ、スウェーデンなども問題に直面しながら外国人と自国民の統合に取り組んだ。移民に関する政策議論は、今すぐに始める必要がある。長期的な日本の国力に関わる問題だ。