いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

「頭のいい人、悪い人」のSNS投稿、決定的な1つの違いPhoto: Adobe Stock

意見の表明は大事だけれど

 自分の意見を表明することは、心を整えるうえでも非常に重要なことだと思う。

「私はこう思う」と言うなり書くなりすることで、自分が何を考えているのかをあらためて確認し、世界とのつながりも感じることができる。

 SNSが普及してからは、意見を言うことができる空間が大きく広がった。

 誹謗中傷や公序良俗に反するものをのぞいて、基本的にネット上には、自由な言論空間が広がっていると考えられている。気軽に意見を表明し、世界とつながることができる。

「いいね」に振り回されていないか?

 だが、SNSにはひとつ厄介な問題がある。

 SNSで「いいね」がつくと、人に認められたような気持ちになる。それだけでなく、周囲にも評価されている印象を与える。その心地よさから、「いいね」がもっとほしくなってしまうのだ。

 しかし、他人の評価を気にしながら意見を表明するというのは不自由なことである。

 たくさん見られるように過激な発言をするとか、たくさん「いいね」をしてもらえるように、心にもないことを言うとか。そんな投稿は、他人の評価に振り回されているだけで、賢明なものとはいえない。

 そういった評価より、はるかに大事なのは自由な心を持つことだ。

 自分の幸福は、他者の評価に左右されるものではない。

 2000年以上も前の哲学者がそう言っている。

他者の評価から自由になる

自分が自分であることに満足せず、まわりからどう思われるかばかりに気を揉んでいたら、いったいどうやって正しい意見を持てるというのか?(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 エピクテトスはストア派の哲学者である。

『STOIC 人生の教科書ストイシズム』では、エピクテトスが大勢から尊敬された理由をこんなふうに説明している。

彼は率直に語る講義を通じて教え子たちの慢心に釘を刺し、知恵に通じる道をわかりやすく示した。自虐的なジョークを飛ばし、偽善者を非難し、心の自由の探求に力を尽くした。(p. 35)

 大事なことを忘れてはいないか? あなたの心は自由か? 明るく問いかけるエピクテトスが目に浮かぶようだ。現代にいたら、「その投稿、『いいね』をもらいたいだけじゃないのか? 本当に言いたいことなのか?」と教え諭してくれそうだ。

「いいね」目当てか、本当の意見か?

 頭のいい人は、SNSで投稿する前に「これはただ承認欲求を満たそうとしているだけではないか」といったん立ち止まる。その思考があるかないかで、書く内容に違いが出る。

 他者の批判や称賛に耳を傾けること自体はいい。ただ、それがすべてになると、他者に振り回されてばかりになる。

 究極的には批判も賞賛も、自分の幸福に関係のないことだ。

 他者に影響されるのでなく、自分の内面にある考え、意見に意識を向けてみよう。

 心の自由を探求することこそが、幸福な人生のために大事なのである。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)