いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

本当に幸福になれること
見せかけで人を魅了するものは捨て去り、踏みつけてしまえばいい。
……真によいものに目を向け、あなたの内面から生まれるものだけに喜びを見出すのだ。
「あなたの内面から」とはどういう意味か?
それは、あなたそのものから、すなわち、あなたのなかの最良の部分からという意味だ。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
ある富豪の女性との出会い
ひょんなことから、すごいお金持ちの女性に気に入られ、よく会っていた時期がある。10歳以上年上のお姉さまだ。ビジネスの相談をしたいとのことだったが、私が思っている常識とあまりにも違う常識を持っているので驚きの連続だった。
たとえばあるときは、カフェで話をしようとしたのだが、なぜかすぐにブランドづくめのお友だちが同席することになり、そのお友だちと「お金持ちあるある」の話で盛り上がっただけで終わった。
「子どものころ、いらないって言っているのに親がお金をジャンジャンくれるから、机の引き出しは万札でぎっしり。いやになっちゃう」
「それそれ、私も~! いやよねぇ」
お年玉さえ取り上げられたうちとは大違いである。
……っていうか、ビジネスやる気あります?
彼女は、ある芸能人を支援するんだとか、美魔女になってみんなを驚かせるんだとか、あなたに一軒家をプレゼントするわとか、言うことがコロコロ変わって、ビジネスの話なのか何なのかよくわからず、どうにもついていけなくなって、そのうちに会わなくなってしまった。
実際、彼女の周りからは人が次々に離れていっている様子だった。
もともとは「お金」や「見た目の美しさ」に惹かれて自然と人が集まって来ていたのが、年をとるうちにどうしていいかわからなくなって、それで新たに「ビジネスを始める」などと言ってみたが、それが何なのかもよくわかっていなかったのかもしれない。
残念ながら当時の私は、うんうんと話を聞くだけで、彼女にうまい言葉をかけてあげることができなかった。
「外面」ではなく「内面」に喜びを見出す
ストア哲学者のセネカなら、こう言うだろう。「あなたの内面から生まれるものに喜びを見出しなさい」。
富、名声、権力をほしいままにできたら幸せというわけではないことは、彼女はじゅうぶん知っていたはずだ。
『STOIC 人生の教科書ストイシズム』にはこうある。
知恵や勇気といった内面にあるものは、使っても使ってもなくならないのだ。むしろ使うほど豊かになっていく。
外形的なもので人を惹きつけようとするのではなく、自分の内面に目を向け、内面から生まれるものに喜びを見出すことができれば、それこそが幸せなのだ。
たとえば、どんな小さなことでも自らやりたいことを見つけ、それに向かって行動をすることができたら、それは幸福への一歩ではないだろうか。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)