いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【必読】「自己肯定感の低い人」のメンタルが一瞬で上がるすごい一言Photo: Adobe Stock

自分を信じる

自分には生まれながらにして誠実さや自尊心があり、心に浮かんだ印象を誤りなく判断できると思っている少数の人は劣等感や自嘲の思いを胸の内に抱くことはないが、大多数の人はその反対である。(エピクテトス『語録』)
――​『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

みんな劣等感を持っている?

 私の感覚でいえば、「自分は生まれながらにして誠実さや自尊心があり、心に浮かんだ印象を誤りなく判断できると思っている」人のほうが大多数なのではないかと感じられる。

 というのも、周囲の人やSNSなどを見ると、大半の人は自分の判断に自信があるように見えるからだ。「それに比べて自分はどうだ」と情けなく思い、劣等感を抱いていた。

 ところがエピクテトスは、「そうではない」と言う。むしろ心のうちに劣等感や自嘲の思いを持っている人こそが多数派だという。

 この言葉を読んで、「なんだ、みんなと比べて自信のない自分はダメだ、情けないと思う必要ないじゃん」とほっとする思いがした。

動物のようになっていないか?

 しかし、そう思ったあとに疑問が頭をもたげる。

 少数の、「劣等感や自嘲の思いを胸の内に抱くことはない」人たちのことである。

 彼らとの違いはどこにあるのか。

 調べてみると、エピクテトスは人間を二つの側面から成り立つものとして考え、この言葉を発していることがわかった。本来、人間は神々と共通する「理性」や「判断力」があるのだが、動物と共通する「肉体」があるため、肉体の側面ばかりに気を取られる人が多いという。

 そして、
オオカミ」のようになる者(不誠実で策謀をめぐらし、害を及ぼすタイプ)
ライオン」のようになる者(荒々しく、手に負えないタイプ)
キツネ」のようになる者(中傷ばかりする。もっとも多いタイプ)
 が大半なのだと述べている。

 オオカミやライオンたちにちょっと失礼ではないかという気もするが、要するに、本来持っているはずの「理性」や「判断力」のほうに意識を向けろ、卑しくなるなと言っているのだ。

ネガティブな感情ではなく、理性で動く

 エピクテトスは、人は本来は理性を持った高潔な存在なので、それに見合ったように生きることを理想として説いている。

 劣等感を持ってしまったり自嘲の思いを抱いてしまったりする自己肯定感の低い人は、この「人は本来、理性を持った存在だ」という一言を心に持ってみてほしい。

 ストイシズムは、人の行動や外部の事象はコントロールできないが、自分の判断や考え方は、理性によってどうにでもなるということを教えてくれる。

 理性をもって冷静に考えれば、そもそも劣等感にとらわれること自体に意味がないことに気づけるはずだ。私たちは誰でも、理性によって、劣等感や自嘲の思いに煩わされることがなくなるのだ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)