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その人の穴はその人でしか埋まらない
人間には感情があり、時に感傷的になることがあります。特に、大切な人を失ったとき、その喪失感を埋めようとする気持ちが生まれるものです。
しかし、その人がいた場所、その人が作った思い出は、代わりのもので埋めることはできません。
代わりのもので埋めようとしない
誰かを失ったとき、人は何かでその穴を埋めようとします。しかし、それは本来のものとは異なり、どうしても代用品になってしまいます。物でも人でも、それはその存在とは別のものであり、完全に穴を埋めることはできません。
無理に埋めようとすると、心に違和感が生じて、それがかえって苦しさを増すこともあります。
穴はそのままでいい
では、その穴はどうすればよいのでしょうか。答えは「どうもしなくていい」のです。
人生には、失ったものやできた空白があり、それを無理に埋めなくても良いのです。むしろ、その空白を受け入れ、他の新しい経験を積み重ねていくことで、自分自身の人生の形が作られていきます。
私たちの人生は、ツルツルの完璧なものではなく、デコボコがあるからこそ味わい深くなります。日本の文化には「侘び寂び」という美意識がありますが、まさにそれと同じで、失われたものがあるからこそ、新たな価値が生まれるのです。
喪失感を受け入れる
喪失感というのは、決して消すべきものではありません。むしろ、それを受け入れることで、自分の人生の一部として生かすことができます。
感傷的な気分になるのも自然なことですし、その感情があるからこそ、より豊かな人生を送ることができるのです。
無理に埋めようとするのではなく、そのまま抱えて生きること。そうすることで、心に余裕が生まれ、次のステップへ進むことができます。
自分の心の穴は自分でしか埋められない
そして、もう一つ大切なことは「自分の心の穴は自分でしか埋められない」ということです。誰かや何かに頼って一時的に忘れようとしても、それは根本的な解決にはなりません。無理に埋めようとすると、依存が生まれたり、かえって苦しみが増したりすることもあります。
穴を埋める必要はありません。ただ、それを抱えて生きること。それこそが、最も自然で、結果的に一番楽な方法なのです。
大切なものを失うことは辛いことですが、それも含めて自分の人生。その感情を大切にしながら、無理をせずに進んでいくことが、一番自分らしい生き方なのではないでしょうか。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 50代を上手に生きる言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。