ほくほく線虫川大杉駅にて日産自動車「サクラ」、北越急行ほくほく線の虫川大杉駅にて Photo by Koichiro Imoto

強烈な寒波が列島を襲う中、EVが大の苦手な「雪国ドライブ」にチャレンジした。バッテリー残量とにらめっこしながら充電スポットにたどり着く行程は、まるでスタンプラリーのよう。人気ゲーム「電車でGO!」に出てくる北越急行ほくほく線を見るために、日本海沿岸を目指して大雪道を含む963kmを何とか走り切った。前編では、振り返れば比較的平和だった横浜~直江津をリポートする。(ジャーナリスト 井元康一郎)

寒いのが大の苦手「日産EVサクラ」で
最強寒波が到来の日本海へドライブ

 バッテリー式電気自動車(BEV)には高性能、低騒音・振動、走行時の排出ガスが発生しないなどの長所がある。一方で、航続距離が短く、低温に弱いのが短所だ。そんなBEVで最も低価格帯の日産自動車「サクラ」で、あえての低温環境、あえての長距離ドライブにチャレンジした。

 サクラは最も売れている軽EVだ。日産の軽自動車「デイズ」をベースにEV開発され、三菱自動車「eKクロスEV」とは兄弟モデル。ルノー日産アライアンスの小型車用モジュール「CMF-A」というプラットフォームを採用している。サスペンションなど軽規格に収まらない部品は専用に作られた。

 バッテリーは日産の20kWhバッテリーパック1個を積む。定格容量57Ahに対して約1.5倍の87Aの電流を投入するため、同じく日産のEV(普通乗用車)「リーフ」にはないバッテリー強制冷却機構が備わる。航続距離は180kmとなっているが、20kWhのうち実際に使用されるのは16kWh前後で、実際の航続距離は暖かい環境下でも150km程度が限界である。

 内外装はデイズとは異なり、シートやダッシュボード下部など一部を除いて全面的にリデザインされている。2022年の衝突安全試験JNCAPでは普通車、軽自動車無差別級の9モデルのうち3位の5スターを獲得。設計の優秀性を示した。

 そんなサクラだが、気温の低い冬季、走行抵抗が格段に増す雪道が大の苦手。しかし今回はあえて豪雪ドライブにトライした。神奈川県の横浜から国道17号線三国山脈越えルートで新潟の六日町へ。そこからは北越急行ほくほく線に沿って日本海沿岸の直江津、糸魚川に達し、国道158号線で長野の信濃大町、長野市、飯山市を通過して千曲川沿いの野沢温泉に向かう。その後、再び新潟に入って津南町から六日町に戻り、往路に似た経路をトレースして横浜に帰着した。

 試乗車は上位グレードの「G」で、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」165/55R15を装着した。筆者は鹿児島県出身なので、雪道走行スキルはA~Eの5段階評価でDを自負している。

 それでは、インプレッションに入っていこう。963kmにわたる雪国ドライブをリポートする。