
日産の軽EVサクラが最も苦手とする、雪国ロングドライブにあえてトライした。ドカ雪のせいで緊急事態が発生し、雷と大粒の氷晶が突風で吹き付け、シャーベット道路地獄を抜けると深雪路地獄が待ち受けていた。それでもマイナス10度を耐えられる寝袋で休憩し、野沢温泉で外国人と山菜蕎麦トークで盛り上がったのは良い思い出だ。バッテリー残量とにらめっこしながら充電スポットをクリアし、横浜~新潟を往復した963kmの珍道中の完結編をお届けする。(ジャーナリスト 井元康一郎)
>>『軽EVで雪道ドライブは無謀?「日産サクラ」で963キロ走ってわかった意外な事実』から読む
ドカ雪のせいで充電できない!?緊急事態
第3レグ:直江津~飯山(199.5km)
軽自動車のBEV(バッテリー式電気自動車)、日産自動車「サクラ」で厳寒期の越後~信州をドライブしてみた。第1レグは横浜~月夜野(203.3km)、第2レグは月夜野~直江津(163.0km)。三国山脈を越え、中越地方までは小雪が舞うものの全般的に平穏なコンディションで、短時間の中継充電を挟みながらも順調に直江津まで達した。
もっともここからはそうは行かない。充電器マップを見ると、直江津から西進する場合、富山、長野方面とも充電スポットが極端に少なくなる。ただでさえバッテリー使用可能容量が16kWh強と小さいサクラにとって、電費の落ちる低温・降雪時にこういうエリアを走破するのはハードルが高く、事前に充電計画をしっかり立てておく必要がある。
ところが直江津で、想定外の事態に遭遇した。充電しようと思っていた日産ディーラーに到着すると、ドライブ当日は水曜日で定休日であり除雪されておらず、前夜のドカ雪によって敷地内が推定40~50cmの積雪深となっていたのだ。
日産ディーラーの大半は休業日や夜間でも24時間365日充電器が使用可能で、日産車に限らず受け入れてくれる。この時も充電器は通電された状態だったが、雪に阻まれてアプローチできないのでは意味がない。
直江津には充電スポットが多数あるので、目当ての充電器が使えなくても稼働している近隣のスポットに回ればいい。が、充電スポットが少ない地域ではそうはいかない。積雪や機材の故障により充電できないと、代替スポットまでさらに数十km走らなければならないこともままある。
直江津から西はまさに充電スポットの過疎エリアで、マトモな性能の充電器は直江津からおよそ40km先の糸魚川に1カ所あるのみ。そこで充電できなかった場合、直江津まで40kmの道のりを戻るか、登り勾配を30km以上走って長野の北小谷まで行かなければならない。冬の悪天候下、サクラにはちょっと高すぎる障壁だ。
こういうところが雪国での小型BEV運用が難しいと言われるゆえんだ。考えた挙句、とりあえず糸魚川に行ってみて、充電できなかった場合は糸魚川と直江津の中間地点にある低速な充電スポットまで引き返せるだけの電力量を確保することにした。そのスポットの充電器は時間が倍以上かかるタイプなので、できれば使いたくなかったのだが、旅が詰むよりはマシだろう。