省エネやエコ意識の高まりを受け、衛生陶器メーカーのTOTOとINAXが節水合戦を繰り広げている。これまでは、トイレ1回の水を流すのに13リットル必要だったが、いまや4.8リットルにまで減った。そこに、パナソニック電工が「トイレ=陶器」の概念をぶち破る家電型トイレで攻勢をかける。節水を核にデザイン性と快適性を備えたトイレが熱い。今、3強時代の幕が開く。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 小島健志)
節水技術に加え素材でも勝負
トイレメーカー三つ巴の戦い
7月下旬の休日、家族連れでにぎわう東京・汐留のパナソニック電工ショールーム。商品を見たり触れたりしながら、客は係員の説明に耳を傾け、質問を繰り返す。
一家4人で訪れた埼玉県草加市の会社員、矢澤剛志さん(34歳)は、新築する住宅に同社製のトイレ「アラウーノ」を入れようと心に決めて、ここを訪れた。矢澤さんは「ブランド力がありますよね。デザイン性もある。名前にも引かれました」と力を込める。
じつは今、電工ショールームには「アラウーノを買いたい」と商品名で求める客が増えている。開発担当者の酒井武之・水廻り商品企画グループ技師は「これまで、トイレはキッチンや風呂のついでで、指名買いなんて、まったくなかった」と話す。
業界首位のTOTOショールームにもアラウーノを求める客が間違って来るほどだ。TOTOはそこを逆手に取ろうと躍起。関係者は「両社の商品をしっかり説明すれば、8割以上の客はこちらに流れると思う。それぐらい自信はある」と強気だ。
だが、電工側は「これまで見向きもしなかったTOTOが振り向いた」と勢いづく。
アラウーノは、わかりやすくいえば、特殊なプラスチック製の家電と呼べる商品。衛生陶器ではなく、アクリルベースの新素材を用いたのが特徴だ。
特殊ゴム管をモーターでくるりと回して汚物を流すターントラップ式を採用。水をため、においを防ぐ山(トラップ)をなくし、洗浄水をボウル部分にすべて使うことで、節水型にした。