投資家を悩ます謎:個別銘柄は乱高下、株式市場は安定Photo:Andrew Burton/gettyimages

 現在の米株式市場は、静かな水面の下で危険な流れが渦巻いている湖のようだ。

 S&P500種指数が年初から4%上昇しているのを目にすると、人工知能(AI)分野での中国台頭とトランプ米政権の関税戦争という二大ショックが起きたばかりだとはにわかには信じがたい。投資家も 先行きの不透明感 を気にしていないようだ。市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(Cboe)のボラティリティー指数(VIX指数)は、今月に入り一時18.6まで上昇したものの、15に低下した。これまでの平均は19.5だ。

 ただ、実に奇妙なのは、S&P500種は落ち着いているのに、その構成銘柄は乱高下していることだ。一部銘柄の下落が他の銘柄の急騰を相殺している。「マグニフィセント・セブン(テック大手7社)」を例に挙げると、全体では投資家が中国のディープシークに肝をつぶした1月24日の終値から2.7%下落。だが個別に見ると、グーグル親会社アルファベットは7.5%下落し、フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズは13.8%上昇している。

 危険なのは、この傾向が逆転し、S&P500種が大きな打撃を受けた場合だ。

「株式のボラティリティーが早々に低下するとは思わないが、新型コロナウイルス禍や世界金融危機のような事態にならなくても、相関が急に高まることはある」。マクロ・リスク・アドバイザーズのディーン・カーナット最高経営責任者(CEO)はそう話す。