
英石油大手BPに言わせれば、10年余り前に米ルイジアナ州沿岸部を汚染した石油流出という大惨事は、メキシコ湾で起きたのではなかった。
それはアメリカ湾で起きたのだ。
BPは、ドナルド・トランプ米大統領がこの湾の400年余り続いてきた名称を公式に変更したことを受け入れた企業の一つだ。トランプ氏が大統領就任後、最初に取った行動の一つは、米国、メキシコ、キューバの3カ国に囲まれたこの62万平方マイル(約160万平方キロ)の国際水域を「アメリカ湾」に改称する大統領令に署名したことだった。
BPは自社ウェブサイトや当局への提出文書で、アメリカ湾での掘削事業および2010年の「アメリカ湾での石油流出」に何十回も言及している。米シェブロンと英シェルがこれに倣ったほか、グーグル、マイクロソフト、アップルも同様で、米国のユーザー向けには現在、自社の地図にトランプ氏が好む名前を載せている。
「われわれはアメリカ湾と呼ぶ」。シェブロンのマイク・ワース最高経営責任者(CEO)は1月31日、アナリストとの電話会議でこう語った。「それが米政府の現在の立場だからだ」
こうした動きは、最大手クラスの米企業の一部に対してトランプ氏が持つ並外れた支配力を物語る。多くの経営者が何カ月も前から新政権に取り入ろうと努力し、トランプ氏の大統領令に即座に従っている。
トランプ氏が連邦政府の多様性・公平性・包摂性(DEI)に関するプログラムの終了を求める以前から、メタ・プラットフォームズやマクドナルドなどの企業はDEIに関する取り組みを縮小していた。企業は気候変動対策の再考と、トランプ氏との訴訟の解決にも動いている。