西側ハイテク業界の新たな「ABC戦略」とはPhoto:Bloomberg/gettyimages

 西側諸国のハイテク企業にとってABC戦略、つまり「中国以外ならどこでも(Anything but China)」が最近の合言葉になっている。

 多国籍企業はここ数年、中国のサプライヤーに依存しすぎていた反省から、いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」戦略を追求してきた。中国のサプライヤーに加え、他の国々のサプライヤーも活用することだ。

 だが第2次トランプ政権下で米中の緊張が再び高まる中、ハイテク企業の多くが中国から生産を引き揚げ、他国に移転させる動きを加速させている。世界のハイテク業界が二大国の間で分断されつつあることの表れだ。

「誰もが中国に代わる移転先を見つけようとしている」。マレーシア半導体産業協会(MSIA)のウォン・シューハイ会長はこう述べた。マレーシアは中国を去るハイテク企業の移転先の一つとなっている。「企業は自分たちのビジネスを再設計している。ジャストインタイム戦略はもう通用せず、新戦略を『ジャストインケース(万が一に備えて)』と呼ぶ人もいる」

 この傾向は、アジアや中南米諸国がバリューチェーン(価値連鎖)を駆け上がるチャンスを生み出しているほか、中国のサプライヤーが、西側顧客の要請で国境の外側に工場を建設するなど、これまで以上に猛スピードで国外事業を展開するのを後押ししている。

 企業が組み立て工程のみを中国国外に移転させていた第1波とは異なり、現局面ではセンサーやプリント基板、電力変換装置といった部品を製造する工場も移転させている、とS&Pの最新リポートは述べている。こうした動きは機械や部品に対する多額の先行投資を伴うため、中国からのサプライチェーン(供給網)移転は、以前よりはるかに恒久的なものとなっているとS&Pのアナリストらは指摘する。