定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

【税理士が教える】高額療養費制度があっても…差額ベッド代は全額自己負担! 知らないと損する入院費の落とし穴Photo: Adobe Stock

「高額療養費制度」が使えない出費はたくさんある

「夫が脳梗塞で入院することになったのですが、個室しか空いていないと言われて入ったら差額ベッド代が1日1万円以上もすると言われました。ほかの部屋に変えてほしいと頼んだところ、4人部屋でも差額ベッド代1日5000円だと言われて、びっくりしました」

 A子さんはがっくり肩を落としています。夫の入院はリハビリをすることも考えると最長6か月になるかもしれないというのです。

高齢者の入院日数は長くなる傾向

 前項で「高額療養費制度」は老後に頼りになる制度だと書きました。この制度があるので、民間の医療保険に入る必要はなく、その分預金しておくべきという人もいますが、私は、60歳からでも医療保険は加入しておいたほうがいいと思っています。理由は、医療費がいくらかかるかなんて、誰にもわからないからです。とくに、入院にかかる費用はバカになりません。

 医療の進化とともに入院日数は減少傾向ですが、高齢者の入院日数は長くなる傾向にあります。そして、問題なのは「高額療養費制度」で負担してもらえない費用です。

 A子さんが困っていた「差額ベッド代」も「高額療養費制度」の対象外。全額自己負担しなければいけません。1日1万円ということは、1か月で30万円、3か月で90万円です。

 それ以外にも、入院すると、病院での食事代寝間着などのレンタル費用お見舞いのための交通費など、もろもろの経費もかかってきます。入院が長引けば、「家族も疲れてきて外食が増えてしまった」という話も聞きます。そういった費用ももちろん全額自己負担です。

 また、先進医療も対象外です。がん治療関連の先進医療などは高額です。先進医療を利用する確率は低いかもしれませんが、いざという時、お金が払えなくてあきらめるなどということになったら、自分にとっても家族にとっても辛い選択になってしまいます。

医療保険で最低限必要な3つの保障

 そういった時の備えになるのが医療保険です。医療保険はひと昔前と比べると、安くなっています。60歳男性なら、月額保険料3000円程度で最低限必要な保障をそろえられます。

 最低限必要な保障は次の3つです。

「入院給付金」は、差額ベッド代や入院中の雑費など、高額療養費制度の対象にならないものに使います。本当は、日額1万円あると安心ですが、ここは保険料との相談です。

「手術給付金」も入っておくといいでしょう。最近の医療保険は、日帰りの手術でも給付金が受け取れます。

「先進医療特約」も付けてください。月額の保険料は数百円程度で、先進医療の治療費が2000万円程度まで補填されます。

 ちなみに、医療保険でもらう給付金には税金はかかりません

 昔に入った医療保険は、この機会に見直すことをおすすめします。保障内容がよくなって、保険料も下がる可能性があります。

 最後になりますが、冒頭のA子さんの差額ベッド代ですが、病室の空きがない、とか治療のために必要だ、などの「病院側の都合」で部屋を決めた場合の差額ベッド代は、支払わなくてよいという決まりがあります。ただ、病院の同意書でサインしてしまうと、払わなければいけないとのこと。そういう場面に遭遇したら、同意書にサインする前に、病院と相談してみてもいいでしょう。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。情報は本書の発売時のものです。