中学受験で最も大切になる「志望校選び」と「過去問対策」の方法について、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』は、すべての受験生必携ともいえる本です。本稿では、本書の刊行を記念して開催した著者・安浪京子先生と算数オリンピック入賞者多数輩出で有名な「りんご塾」塾長の田邉亨氏との対談の中から安浪京子先生の発言を抜粋して「算数力」アップのコツを紹介します。

計算ミスの「3大原因」とは?
6年生でも「計算ミスがなくならない」と悩まれている親御さんは数多くいらっしゃいます。
計算ミスの原因は大きく2つあり、さらに最近の子どもたちに顕著なもう1つの要因があります。
まず、計算の基本的な考え方が十分に身についていないこと。親御さんは単なる計算ミスと思われがちですが、実際には小数点の移動の仕方など、基本的な計算の概念が十分に理解できていない場合があります。
さらに、高学年では模試の計算問題で必ず出る「□を求める計算」も、6年生でも多くの生徒が解法を理解していません。たまたま正解できたとしても、それは本当の理解によるものではなく、運による場合が多いです。
また基本的な計算は足し算、引き算、掛け算、割り算の4つに集約されますが、九九がしっかり身についていないために、たとえば「7×8」が絡む計算で時間がかかったり、繰り上がりの足し算が弱かったりなど根本的な計算力が不足していることもあります。
こういった基礎的な部分が理解できていなくても、塾では細かい部分までチェックはしてもらえないため、気づかれることがありません。ですから、親御さんが子どもの解答過程をしっかり確認し、どこでつまずいているかを把握する必要があります。
もう一つの原因は、子どもがやる気がないことです。本来、集中して取り組むべき計算が子どもにとってはただのルーチン作業となっていると、ミスは増えます。「やらされ感」が強いうちはミスが多く、たいてい6年生の12月頃までは改善されにくいです。
子ども自身が本当に志望校に合格したいと熱望し、一点も落としたくないという強い気持ちを持たない限り、ミスはなかなかなくなりません。子どもは切羽詰まらないと「自分ゴト」として実感できず、「自分ゴト」として実感するまでは計算ミスをなくすことは難しいのです。
スマホ世代特有のミスの原因とは?
さらに、現代の子どもたちに特有の理由として、「書くこと」自体が苦手になっていることがあげられます。なんでもスマホで済ませる機会が多く、塾や学校でもタブレットを使うことが増えているため、鉛筆を使って書く機会が激減しています。
鉛筆を使う習慣がなくなると、漢字の書き取りも苦手となり、とめはねや払いといった基本的な筆記技術も不足します。立体図形や正方形を正確に描くことも困難になり、字も雑なので見間違いから計算ミスが生じることが多くなります。
5年生や6年生になってもいきなり綺麗な字が書けるようになるのは難しいですが、筆記用具(たとえば鉛筆やシャープペンシルの濃さを2Bにするなど)を工夫して使うことが一助となります。このあたりの話は拙著「中学受験必勝ノート術」(ダイヤモンド社刊)にも書いております。できれば低学年のうちからなるべく、書く練習をしておくにこしたことはありません。
*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社刊)の著者・安浪京子先生と『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)の著者・田邉亨先生との対談から、安浪先生の発言を抜粋・編集したものです。