10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、好評です。本稿では、本書の刊行を記念して行われた、りんご塾・塾長の田邉亨氏と算数教育家の安浪京子先生との「算数力アップ」対談から抜粋し子どもの能力を伸ばすコツを紹介します。

意外! 優秀な子の家庭は「〇〇」がいい!
田邉亨先生(以下、田邉):親が切羽詰まっていない家庭は、子どもも伸びやすいですね。大事なのは、まず親自身が今の生活や夫婦・親子関係に満足していること。親自身が今の状態に納得していないと、子どもを使って受験に勝利し自己肯定感を得ようという「代理戦争」のようになり、うまくいかなくなります。
そのためには、夫婦関係がいいことはとても大事です。
たとえば、私自身は少し恥ずかしいですが、スマホの待ち受け画面を「妻の写真」にしています。生徒の親御さんにも、「スマホの待ち受けにお互いの写真を入れると子どもの成績があがりますよ(笑)」と勧めています。
もし「妻(夫)の写真がない」というなら、次の休みに景色の良い場所へ日帰り旅行をして、そこで写真を撮ってください。「子どもの算数力をあげるためにと先生に言われた」という口実を作れば照れくさくないでしょう(笑)。こうすることで、家族間の衝突が減り、徐々に正常な距離感が戻ると考えています。
――家族関係は、夫婦関係がまず第一なんですね。
田邉:親が自分を肯定できれば、その安心感が子どもにも伝わり、子どもは本来の力を発揮できます。
安浪京子先生(以下、安浪):待ち受け写真は家族写真では、ダメでしょうか(笑)。
田邉:家族写真はよくありますからね。夫や妻一人だけの待ち受け画面というのは普通ならあり得ないでしょう。どうせならありえないことをやりましょう(笑)ヘアメイクもばっちりして、きれいな写真を撮ってね。
――安浪先生も、たくさんの家庭を見てこられたと思いますが「できる子の家庭の共通点」として何か挙げられることはありますか?
安浪:田邉先生おおっしゃったように、優秀な子の家庭は、親子や夫婦で会話がある家庭が多いです。たとえば、私が家庭教師としてメールでやり取りする際も、ほとんどの場合、お母さまがメインで連絡してこられることが多いですが、夫婦で共有するためにお父さまがCCに入っていたりするご家庭が目立ちます。常に情報を共有し、何か問題が起きても夫婦や家族で話し合っていこうという姿勢があるんですね。それによって子どもは安心感を得られ、自由に成長できるのだと思います。
戦後すぐとか困窮していた時代なら、子どもが必死に勉強することでお母さんを楽させてあげようとか、ハングリー精神でやる気がわくこともあったかもしれませんが、現代は安心できる家庭環境が子どもの成長に大きく影響するように感じますね。
――なるほど。子どもにとっての「安心感」はそれほど大事なのですね。
安浪:そうですね。あと、厳格なタイムマネジメントをせず、親が子どもに任せるスタイルのご家庭が多いです。もちろん親がガチガチに管理して成果を出されているご家庭もありますが、伸びやかに成長していく子は、分単位での管理はされていないですね。もちろん放置という意味ではなく、距離感の取り方が上手だと思います。
*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)の著者・田邉亨先生と、『中学受験必勝ノート術』、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策』(ともにダイヤモンド社刊)の著者・安浪京子先生の対談から、抜粋・編集したものです。