「上司に意見を言わない部下」が心の底に隠しているホンネ写真はイメージです Photo:PIXTA

組織開発・人材開発・人事コンサルティング支援などを専門とする、上林周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)から、抜粋・再編集して特別公開します。今回は、「自分の意見を言わない部下」から本音を引き出すコミュニケーション術を紹介します。

自分の意見を言わない部下は
必ずしも「やる気がない」わけではない

 1on1に限らず、部下が意見を表明しないとき、私たちはつい「考えていないのだろう」「やる気がないのでは」と捉えてしまいがちです。しかし、実際には「意見がない」のではなく、「意見を言える状態にない」だけであることがほとんどです。

 たとえば、
・「どうせ言っても変わらない」
・「否定されるのが怖い」
・「何を言えばいいのかわからない」
・「正しい答えさえ言えばいいと思ってしまう」
といった心理的なブレーキが、その背後に潜んでいます。

 だからこそ、リーダーがまず整えるべきは、「意見を出させること」ではなく、安心して意見が言える「地ならし」 です。その意識のうえで、部下が意見を言えない理由にはいくつかの典型パターンが存在します。

 ここでは現場で特に多い2つのケースについて、関わり方のポイントを整理していきましょう。

・パターン1
仕事には満足しているが、「今後どうしたいか」が見えない人

【背景】
 このタイプは、日々の業務には一定の満足感を持ちながらも、「将来どうなりたいか」を語れないケースが多く見られます。一見すると意欲が低いように映るかもしれませんが、その背景にはしばしば、「キャリア=役職」という前提が根強く残っていることがあります。

「昇進したいわけではない」「異動にも興味がない」こうした言葉の裏には、「役職に興味がない=キャリア志向がない」と自分で捉えてしまっている構造があるのです。

【関わり方のポイント】
 この場合、キャリアを「ポジション」ではなく、「どんな状態で働きたいか」という観点で捉え直していくことが重要です。

 たとえば、「半年後、どんな働き方なら“充実している”と感じられそうか」「あなたにとって、仕事の手応えはどんな瞬間に生まれるか」といった問いによって、本人も気づいていなかった価値観や優先順位が浮き彫りになります。

 さらに、「キャリア資本」という視点を提示することで、役職ではなく、「スキル・経験・知識といった“これから積み上げるもの”」に意識を向けてもらうことも効果的です。