写真はイメージです Photo:PIXTA
移民政策をめぐる議論は、治安の悪化や財政負担への懸念と、経済成長への期待のあいだで揺れている。しかし、これらの主張は必ずしも同じ前提に立っているわけではない。外国人労働者の受け入れが日本社会に与える影響を、データと制度の観点から整理してみよう。※本稿は、経済学者の八代尚宏『「政府の失敗」の克服―規制改革をどう進めるか』(日本法令)の一部を抜粋・編集したものです。
外国人が増えても
税収が上がるとは限らない
外国人が増えて経済成長が高まれば税収も増えて財政収支は改善するという見方があります。
しかし、これは日本に在留する外国人の年齢や給与水準にも依存しており、一概にはいえません。例えば、育成就労や特定技能の在留資格で来日する外国人には若年層が多く、医療保険も多く利用しないため、一定年数で帰国すれば財政にはプラスとなります。
他方で、家族とともに永住権を得て定住する外国人の場合には、その給与水準が日本人の平均を下回れば、その税・社会保険料納付額と比べて受給する社会保障給付額や子どもの教育費等の方が大きくなり、財政悪化をもたらす可能性が高いといえます(原英史・黒澤善行・五島知佳、「日本の税・保険料負担による再分配構造の包括的分析」、アジア成長研究所Working Paper Series Vol.2025-13.2025年)。
その意味では、高度人材だけでなく、少なくとも定住に結び付く「中度人材」については、日本語能力に加えて年収要件への配慮も必要となります。
今後の高齢化社会では、社会保障給付の増加で財政の状況は現状よりも、いっそう厳しくなります。そうした中で、外国人労働者を短期間の労働力としてみるのではなく、長期的に老後の生活も共にする存在として受け入れるためには、財政面での一定の貢献は、その基本的な要件の1つとなります。
移民は治安に影響を及ぼすのか
確かめたい3つの重要点
移民の本格的な受入れについての賛否に影響する大きな要因として、外国人の増加により治安が悪化するリスクがあります。







