「あなたは、メンバーが持つ異なる経験や体験を評価・歓迎していますか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「すぐに実践してみます!」と、とくに現場リーダー層を中心に多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「部下をつぶすリーダーの特徴」を紹介します。

多様な人を集めただけの組織
異なる組織や業界、地域で働いた経験のある人を採用する。
この効果は単純に「1人分の労働力が増えた」にとどまらない。
今までにない知識や考え方を取り入れ、新たな成果の出し方や組織運営のパターンを実現することにもつながる。
一方で、異なる経験・体験をした人がいても、無関心または無視。多様な人を集めただけで、今までの自組織の当たり前を押し付け、同調圧力によって、せっかくの新しい考え方・発想・着眼点などを無力化してしまう組織もある。
ダイバーシティ&インクルージョン(多様性を包括する)どころか、ダイバーシティ&無力化である。せっかく今までとは異なる経験・体験を活かすチャンスなのに、もったいない。
異なる経験・体験をした人を無力化していないか
異なる経験や体験をした人を無力化する組織。筆者はこれを“Diversity Zoo”(ダイバーシティ動物園)と呼び、ダイバーシティ&インクルージョンをテーマにした企業講演でも繰り返し主張し、警鐘を鳴らしている。
あなたの職場は“Diversity Zoo”の状態に陥っていないだろうか。
異なる経験・体験を持った人の知識やエピソードを、多様なインプットの一つと捉えてみよう。
文化度の高い組織は、そうして経験・体験の多様性を組織づくりに活かしていく。
経験・体験のダイバーシティがもたらすメリット
異なる経験・体験をした人の知見や着眼点を組織に取り入れる。あるいは自ら多様な経験や体験をしてみる。いわば経験・体験のダイバーシティは、あなたの組織にさまざまなメリットをもたらす。
①共創力の向上
自分たちと異なる立場の人、異なる経験・体験をした人の事情や背景を知ることができ、相手に対する想像力を持って接することができる。
たとえば、デザイナーはどのような仕事の仕方を好むのか、その逆にどのようなコミュニケーションをすると悪気なくイラっとさせてしまうのか(もちろん人にもよるので丁寧な対話と相互理解が必須)。それは営業職や事務職の人たちだけで話し合っていても想像しにくい。
自分とは異なる相手と一緒に仕事や対話をすることで、あるいは自分たちが相手の仕事を体験することで、相手の痛みや心地よさを知れる。
相手の景色を見に行くことができて、共創しやすい仕事の仕方、コミュニケーションの取り方の実践や工夫も可能になる。
②他者体験の習慣化
さまざまな体験をする機会を増やそう。
実体験を通じて、自分たちとは違う立場や境遇にある人の痛み・不便・快適さなどを自分ごととして感じやすくなる。それらを解決するための発想、新たな製品やサービスなどのアイデアも生まれやすくなる。いわゆるデザイン思考の強化、マーケティング能力に直結する。
小難しい勉強や研修をするよりも、経験のダイバーシティを高め他者体験を習慣化したほうが、よっぽどデザイン思考もマーケティング能力も高まるのではないか。
③組織体質のアップデート
同じ経験しかしたことがない人、同質性の高すぎる人たちばかりでは、悪気なく内向きになり組織の文化も空気も淀む。
多様な経験・体験を持つ人を組織に取り入れることは、上記に限らず、さまざまな組織体質を健全化する意味もあるのだ。
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、「多様な経験・体験を尊重しない組織」を変えるための具体的な方法も紹介しています)