「組織への批判を、自分への批判だと感じていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「すぐに実践してみます!」と、とくに現場リーダー層を中心に多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「論理的に対話できないリーダーの特徴」を紹介します。
![【だから部下が辞めていく】人の意見を「論理的に判断」できないリーダーの「共通点」・ワースト1](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1300/img_73b792c885b9e43ef7534aa58c72ca20179211.jpg)
会社への批判を「自分への批判」と捉えるリーダー
たとえばあなたが、職場で仕事の進め方や業務プロセスの不備を指摘したとする。または改善するための提言をしたとする。上長や周りの人はどのような反応をするだろうか。
「あなたの指摘を冷静に受け止める」
「猛烈に反発する」
後者の反応を示す人たちは、「組織の否定=自己の否定」と捉え感情的になっている可能性が高い。
これは何ら珍しいことではない。組織への忠誠心が高い人や、情熱を持って尽くしてきた人ほど、会社の人格と自己の人格を同一視しがちである。
自分たちが会社を支えてきた自負もある。その結果、今の組織のあり方に対する指摘や提言を、会社に対する批判、ひいては自分自身に対する批判と捉え、ついカッとなってしまうのだ。
一方で、社歴が浅い人、転職を繰り返してきた人、人生における仕事の比重が低い人、複業や兼業または地域活動などをしていて他にも所属する場がある人は、あまり気にしない。組織と自己を分けて考える傾向が強いからだ。
人材流動性が少なく、一社専任で働いている人が多い組織ほど、組織のアイデンティティと個のアイデンティティを同一視する。
「組織の問題」と「個人の問題」は別
これはどちらが良い悪いということではない。組織との関わり方によってもたらされる傾向の話である。
とはいえ組織と個を同一視しすぎるのも問題である。他者による組織への指摘を素直かつ客観的に受け止めにくくなり、その結果、組織の問題や業務プロセスを改善する動機づけが行われにくくなる。対話や議論も阻害され、いわゆる大企業病に陥りやすい。
逆に、過度に自己や他者を攻撃しがちなのも問題だ。たとえば会社や部署が大きなトラブルや不祥事を起こしたとする。組織の問題であるにもかかわらず必要以上に自分自身を否定し、皆で萎縮する。またはトラブルを発生させた個人を責め、罰して済ませようとする。
その傾向が強くなると、他社や他部署の不祥事に対しても個を責めるようになる。
たとえば、不祥事を起こした他部署の管理職や社員が外食している姿を目撃して「不謹慎だ」などと批判する。不祥事は部署や社の問題であって個人の問題ではない。プライベートの時間で何をしようが関係ない。こうして陰湿なムラ社会さながらの価値観ができあがる。
組織への「忠誠心」「依存心」が対話を妨げてしまう
こうしたことは、難関な入社試験や資格試験などを合格した末に就いた職種や、いわゆる学歴の高い人たちが多い職種や業種などで起こりがちである。
人材流動性が低く(辞める人が少ない)、なおかつプライドが高すぎるがゆえに、その組織や職種の批判を自己の批判と捉え、異を唱える人たちを排除しようとする。組織への忠誠心や依存心が強すぎるのも問題なのだ。
組織と個を同一視している組織の人たちは、内向きな志向が強くなる。
自組織に対する健全な批判を受け入れられなくなり、自己を過剰に正当化したり、他者を攻撃したりするようになる。
これでは議論が成立しないのはもちろん、社外との共創も見込めなくなる。
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、「組織と人を同一視する文化」をなくすための具体的な方法も紹介しています)