「あの上司って、部下をダメにするよね?」と噂される人がやってしまっていること・ワースト1とは?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

いいフィードバックとは?
最近増えてきた研修の一つが「フィードバック研修」です。
この研修に参加される管理職の方々の多くは、「フィードバックをいくらしても部下に成長や変化が見られない」という悩みを抱えています。
研修では、ケーススタディを使ったロールプレイングを行うのですが、ほぼ毎回のようにお伝えするアドバイスが、「話し過ぎないようにすること」です。
多くの情報で、部下を圧倒していることが多いのです。
もし、あなたが上司から次のようなフィードバックを受けたら、どう感じるでしょうか。
「報告書はもっと簡潔にまとめてね。クライアントへの提案資料もそうだけど、説明が長すぎ、全体的に文字も多いよね。次の提案資料では、まず相手の業界動向や市場のニーズをもっと具体的に調べてみてほしい。そのうえで、提案内容には具体的な課題解決の方法を明確に示すことが必要です。例えば、競合他社の事例や成功例を参考にしてみるといい。数字やデータもイラストや写真で示せるし。それと進捗や変更点について、もっと頻繁に私に報告をしてほしい。その時はリーダーの鈴木さんにも同報してください。これらを意識して、次回の提案をしっかり強化してください」
報告書の話だったはずなのに、途中から提案資料に変わり、何を優先にしたらよいのかもわからず、ただ圧倒されてしまうのではないでしょうか。
人は一度に多くの事柄を覚えたり、改善したりすることはできません。それは、部下も同じです。
話すぎのフィードバックは、部下をダメにしてしまうのです。
伝えることは絞り込む
ある優秀なマネジャーは、言いたいことが10個あるならば、
「今、言うべきはせいぜい2つまで。それ以外の8つは、勇気をもって、別の機会にまわす」
と話していました。
そのために、今日フィードバックするのはこの2つと、最初から厳選しているのだそうです。
「一度に多くのことを指摘されても、部下は何を優先すべきかわからず、改善に取り組む意欲を失うことがあります。2つ程度なら、取り組みやすいですよね。結果的に、思ったより早く他の8つのフィードバックもできるもんですよ」
部下の成長をサポートするフィードバックは、焦らず、計画的に伝えることで最大の効果を発揮します。
次回のフィードバックでは、何を優先して伝えるべきか、ぜひ考えてみてください。
少しずつ進めることで、部下もあなたも、大きな成果を手にすることができるはずです。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。