
2027年に売り上げの約半分を占める主力薬の特許切れが迫る、国内製薬3位のアステラス製薬。この危機を回避すべく8000億円という巨額買収で手に入れた後継薬候補が次々悲報に見舞われ、2年後に直面するパテントクリフ(特許の崖)を前に正念場を迎えている。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
アステラスが3期連続の減益
減損損失が決算時の風物詩に
製薬大手のアステラス製薬は2025年3月期第3四半期決算発表を控えた1月24日、今期の利益予想について、従来予想の800億円から110億円へと大幅な下方修正を発表した。
主な要因は加齢黄斑変性の新薬「アイザーヴェイ」の欧州における承認申請取り下げ、筋強直性ジストロフィー治療プログラム「AT466」の開発計画変更による約1760億円の減損損失だ。25年3月期第3四半期は241億円の赤字に転落した。
同社は主力品である前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の売り上げ予想の上方修正を理由に「コアベースでは増収増益」と強調し、配当は年74円で据え置いた。しかし、アイザーヴェイの欧州での承認取り下げが明らかとなった昨年10月末から下降の一途をたどる株価は反応せず、11月初旬には1800円前後だったのが今や1400円台で推移している。
アステラスの目下の経営課題が27年に控えるイクスタンジの特許切れであることは、同社の株主なら恐らく知らぬ者はいないだろう。
他社から買収した次世代の主力薬候補で毎年減損を出し、イクスタンジがそれを補うという決算が21年以降続き、業界関係者からは経営陣の目利きのなさが指摘されてきた。結局、24年度も同じ轍(てつ)を踏むことが確実となった。売り上げの約半分を占める屋台骨の特許切れが2年後に迫るも、その経営課題の克服が全く見通せないことを株主に見抜かれた結果が、今の株価だといえよう。
しかも、第3四半期決算発表後の2月13日、このアイザーヴェイに関するさらなる悲報がアステラスを襲った。