製薬業界のリストラに異変が起きている。国内製薬大手のアステラス製薬が実施した早期退職募集には、若い層が積極的に応募している。外資大手の日本法人では、リストラの手口がより過激化している。特集『後悔しない 医療・介護』の#19では、製薬リストラの異変を詳らかにする。(ダイヤモンド編集部 野村聖子、臼井真粧美)
アステラスの早期退職募集
「若い層が積極的に応募」
昨年8月に発表されたアステラス製薬の早期退職募集の応募が年明けの1月上旬に締め切られた。今回のリストラは営業体制見直しのための施策で、対象は勤続5年以上のMR(医薬情報担当者)が中心だった。
同社は応募者数を現時点では明らかにしていないが、「応募目標人数を達成するために面接を何度もして追い込んでいくのが常」(アステラス元幹部社員)といい、3月末の退職者は想定の500人以上に達しているようだ。
アステラスはここ数年、1~2年に1度のペースで大規模な早期退職募集を行っており、武田薬品工業同様に、もはやリストラがお家芸となりつつある。2月には、4月1日から発足する国内の新しい営業組織体制を発表し、現在の16部署から8部署へ大幅に減少する。MRをリストラした分、組織をスリム化。これは管理職ポストも減ることを意味し、社内競争も熾烈さを増していくだろう。
かつての武田薬品のリストラは、失意のまま会社を去る者がほとんどだった。影響は家族にまで及び、「妻が自殺した社員もいた」と武田薬品のOBは打ち明ける。
リストラのターゲットとなるのは通常、主に40代から50代。彼らが今の給料を維持できるセカンドキャリアを見つけるのは容易ではない。MRの場合、次も競合他社のMRにありつければ御の字。多くが給料3割減で医療機器の営業職や、コントラクト(派遣)MRに“都落ち”するか、薬局薬剤師への転身が関の山といったところだ。多くの者が、怨嗟の声を上げながら、会社を去った。
今回のアステラスによる早期退職募集は、従来と様相が異なるようだ。業界関係者によると「若い層が積極的に応募している印象」で、彼らには悲愴感がないという。
製薬業界のリストラに異変が起きている。その一つが、若手による見切り。そしてもう一つ、外資大手の日本法人においてはリストラの手口がより過激化し、一層の悲愴感が漂う。次ページでは、二つの異変を詳らかにする。