結局、麻雀は明け方まで続けられ、1時間程度しか眠れなかった。大雪や台風などはそうそうあるものではない。そんな非日常に、緊張感のカケラもなく浮かれポンチになってしまう上司。呆れてものも言えない。

 長い銀行員人生、数多くの支店長に仕えた。カラオケボックスで、朝まで支店長のサザンオールスターズナイトに付き合わされた時には、恨みはないはずの桑田佳祐にしばらくの間嫌悪感を覚えたこともあった。まあ、アクの強い人間こそ出世する変な業界なので、今に始まったわけではないことは分かっている。

「何が何でも午前9時に窓口を開けなければ、支店長のクビが飛ぶ」と昔からよく言われていた。それが都市伝説なのか否かは分からないが、全国に数百ある支店の中には、停電などで支店が開けられないといったアクシデントもあるはずだ。

 例えば入り口の故障などで、開けられなかった時はどうするのか、先輩課長に質問したことがある。その時に聞いたのは、店内に来店客を通す通路が1カ所でも確保できていればよいという答えだったが、それが本当かどうかは分からない。

 実際、私が過去に在籍した支店では、開店時にシャッターが上がらなかったことがある。シャッターを巻き上げる電動モーターが故障したのだが、天井点検口から入り、手動でハンドルを回し、事なきを得た。以前にメンテナンス業者が来た際、非常時に備えて質問しておいたことが、思いがけず役に立った。

「忘れないように」って祈ってるんだ
男気に溢れる課長が語った阪神淡路大震災

 20年以上前。さいたま新都心支店の取引先課に在籍していた頃のことだ。隣の課に属する水上課長は当時、30代後半だったろうか。取引先課が6課もあるマンモス店であっても、他の課のメンバーと分け隔てなく気さくに接してくれる良き兄貴分だった。

 銀行というものは、取引先課同士で互いに足を引っ張り合い、険悪な関係に陥ることが多い組織なのだが、彼は自分の課のことよりも支店全体を第一に考える、男気に溢れる人物だった。そんな熱い課長が、行きつけの小料理屋に誘ってくれた。