実際、先生のご説明は、あまり楽観的なものではありませんでした。

(1)開頭手術では、可能となる最大範囲まで切除した。
(2)当初はそれで脳が腫れたことからくる圧力を軽減するはずだった。
(3)浮腫は若い方の方が起こしやすいが、夫は還暦なのに予想より腫れが進んでいる。

 先生は画像に沿って説明を続けます。それによると、ここまで腫れると命がなくなるというラインまで、もうあと数ミリも残っていません。その時点でまだ術後2日しか経過していなく、今後、浮腫のピークはさらに2日後と予測されると。

 おそらく、「ほぼ助からないだろう」ということだったのだと思います。

 命の炎が消えませんように。眠り続ける夫のそばで私たちはただひたすら祈りました。

 天に想いが通じたのか、不思議なことに浮腫はそこでぴたりと止まりました。それから数日して、夫は目を薄く開けました。

「助かった!」。嬉しくて、涙が出ました。