「小さいマウス」から
引き出された潜在ニーズ
性弱説的な視点に立って現状方法を聞いて得られた情報はこうです。
「スマホゲームの画面をモバイルモニターに映して使っている。しかし、モバイルモニターのタッチパネルを触るには、わざわざモニターに近づかないといけない。一方、スマホの画面でボタンを押そうとすると、ボタンが小さくて押しにくい。パソコン等で使うマウスを使っているものの、リビングや寝室では使いにくい」
この情報をよく分析してみると、「小さいマウスが欲しい」というニーズを口にした顧客が本当に欲しいものは、「離れた場所からモバイルモニターの映像を見ながら、スマホゲームを簡単に操作できる道具」になります。これこそが「小さいマウスが欲しい」と言った顧客が持つ潜在ニーズなのです。
「小さいマウスが欲しい」というニーズに対して性善説的な捉え方をすると、出てきたニーズをそのまま顧客が本当に欲しいものと受け止めます。その結果として出来上がる小さいマウスは、顧客を満足させられません。
だからこそ、「顧客の言葉から潜在的なニーズはなかなか出てこない」という前提に立つ性弱説的視点が、潜在ニーズ収集には求められるのです。現状のマウスの利用方法を確かめ、潜在ニーズを引き出していく。その答えは「離れた場所からモバイルモニターに映る映像を見て、スマホゲームを簡単に操作できる道具」というものでした。このニーズを満たせれば、画期的な商品となる可能性があります。
例えば、片手で握って親指や人さし指などでカーソルを移動させたり、ボタンを押したりできる無線通信型のコントローラーであれば、このニーズを満たせそうです。そして、モバイルモニターの市場動向を調べると順調に拡大しているため、単なる一個人の好き嫌いではなく、モバイルモニターを購入するスマホゲーム愛好家が増えており、彼らの多くが同じニーズを持っていると推測されます。
持続的にヒットする商品は
社会環境と連動している
潜在ニーズに基づいて新商品開発をする際に、ニーズの深掘りとは別に重要な点があります。それは、引き出した潜在ニーズが社会環境と連動しているかというものです。先ほどの「1分で沸かせるポット」については、「たくさん沸かすよりも早く沸かしたい」というニーズを現状方法から導き出しました。そして、単身と2人世帯が増えているという社会環境の変化があります。