収集できたニーズについても、特にあれこれ考えずに、ある程度集約してそのまま新商品に生かせます。つまり、「取ってきて」と頼めばニーズが集まり、そのニーズを基にそのまま開発できるのです。「顧客が正直なニーズを発し、それを正面から受け止めて反映させる」という、まさに性善説的な進め方で新商品開発を進められます。
しかし、後者のように付加価値を劇的に高めたり、全く新しい付加価値を提供したりするような新商品開発の場合、そう簡単にはいきません。なぜなら、顧客も気付いていないような「潜在ニーズ(隠れたニーズ)」に基づいて開発する必要があるからです。
この場合、顧客と接点がある担当者に「ニーズを取ってきて」と頼んでも、ヒントとなるニーズはほとんど拾えません。何せ自分たちは、顧客が使ったこともなく、想像したこともないものを作ろうとしているのです。
そうなると、ニーズ収集を依頼しても、顧客がそれを正確にイメージすることも、担当者がそれを引き出して言語化することも難しいと想定しなければなりません。「ヒントこそ得られるとしても、そのまま生かせるものが得られるのは難しいぞ」。この考え方こそが性弱説的思考に基づいた姿勢です。
顧客ニーズを捉えて
どう発展させるのか
「もっと小さなマウスが欲しい」
こういったニーズが顧客から出てきた場合、どのように捉えて、どういうふうに新商品開発に生かすべきでしょうか。ぜひ一緒に考えてみてください。まずは、先ほどの前者のような性善説に基づいて考えてみましょう。
今作っているマウスの中で、一番小さいマウスは縦8cm、横4cm、高さ2.5cmの楕円形をしているとします。このニーズへの正面からの回答は、これよりも小さいマウスを作るというものです。
そこで一回り小さく、縦6cm、横3cm、高さ2cmのマウスを企画します。今までのものよりも小さいから、「もっと小さいマウスが欲しい」と感じていた人に満足してもらえるいい新商品になりそうです。何せ、顧客ニーズを聞いて直接的に反映した、マーケットインの手法に基づいた新商品なのですから。
次は、同じニーズから、付加価値を大きく向上させる画期的な新商品開発を模索してみます。この場合、先ほど説明したように、顧客が気付いていない「潜在ニーズ」を見つけなければなりません。そうなるとまず考えるべきは、「もっと小さなマウスが欲しい」というニーズが、どういった理由によるものか、というものです。