もう1つは、配膳にばかり注目している顧客の思考を注文システムに向けられることです。注文周りについてもヒアリングでき、解決案を検討する上での選択肢が増えます。

個人任せにしない
本質的なニーズ把握

 つまり、難度が高く最も重要な「(1)ニーズ把握」において、顧客がイメージしやすい成功事例を資料として用意すると、各個人のヒアリングスキルへの依存度を下げつつ、顧客からより多くの情報を収集できるようになるのです。

書影『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)
高杉康成 著

 同様に「(2)解決案検討」「(3)導入可能性模索」についても、性善説のような個人任せにしません。性弱説では「似たような事例を探す」という、より簡単な方法でアプローチします。そして最後の、「(4)顧客への提案」においても、他の担当者が成功したフォーマットを共有し、各個人のスキルへの依存度を下げます。

 ソリューション提案成功のカギは、本質的なニーズが把握できるかにかかっています。キーエンスでは、第1段階の「ニーズ把握」で顧客の本質的なニーズをできるだけ簡単につかめるように、ツール、仕組みを整備しています。守秘義務などに触れない範囲で、他社での成功事例を顧客に簡単に説明できるツールを作り上げるのです。

 さらに営業担当者は、顧客の目の前で商品のデモンストレーションができるように必要な機材を持ち歩きます。そして、それらを使ったロールプレイング型の研修も日常的に実施。こうすることで個人個人を成長させながら、個人のスキルに依存しない「簡単化」された体制を築いているのです。

【ポイント】
◆ソリューション提案は難度が高いと心得る
◆本質的なニーズの把握が決め手である
◆「簡単化」で個人をそだてつつ、個人に依存しない