中国の習近平国家主席中国の習近平国家主席 Photo:Kent Nishimura/gettyimages

ロシアによるウクライナ侵攻から3年
習近平にこの戦争は止められたのか?

 約3年前の2022年2月4日、北京冬季五輪の開催に合わせて中国を訪問したロシアのプーチン大統領が、北京で習近平国家主席と会談した。新型コロナウイルスの感染拡大と中国による徹底した「ゼロコロナ」策も影響し、両者にとっては約2年ぶりとなる対面での会談だった。

 首脳会談後に発表された共同声明では、中国とロシアの友情に限界はなく、協力する分野には禁じられた分野もないとしたうえで、NATO(北大西洋条約機構)の更なる拡大に反対すると訴えた。当時、ロシアはウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させていた。プーチン大統領の真意を模索する西側諸国は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を警戒していた。

 そして、中露首脳会談から20日後の2022年2月24日、ロシアはついに侵攻を開始する。この日を挟んで、「プーチンは合理的な指導者であるから、ウクライナへの軍事侵攻はしないだろう」「軍事侵攻はウクライナ東部だけに限定される」「ロシアとウクライナの間の圧倒的な軍事力ギャップを考えれば、戦争は短期で終了するだろう」といったさまざまな臆測や分析が世論を覆った。結果的に、それらの多くは的を射ていなかった。

 プーチンは大胆な軍事侵攻を展開し、侵攻は首都・キーウを含むウクライナ全域に及び、戦争は長期化した。侵攻した当時、この戦争が現在に至るまで3年以上も続くことを、根拠をもって予測することは困難だったに違いない。

 大方の予想に反して、戦況が泥沼化する中、中国研究を生業にする筆者の元には次のような質問が投げかけられた。

「ロシアによるウクライナ侵攻の20日前に行われた首脳会談で、プーチンは習近平に侵攻の意思を伝えていたのではないか?習近平は事前に知っていたのではないか?」

「習近平であれば、プーチンを説得し、侵攻を止められる(た)のではないか?」

「中国がロシアに対して軍事支援を行っているから、戦争が終わらないのではないか?」

 特に3番目に関しては、バイデン米前政権は中国側とウクライナ情勢について議論するたびに、中国側に対して自制を促してきた経緯がある。一方、筆者の見解によれば、上記3つの問題提起に関して、状況はそんなに単純ではないし、「プーチンの侵攻を止める」という作業も、一筋縄にはいかない。

 そして、ロシアによるウクライナ侵攻から3年がたち、米国でトランプ第2次政権が本格始動する中で、この戦争を終結させるという意味で、その期待感が習近平ではなく、トランプに向けられているという現状を目のあたりにするとき、正直、隔世の感を禁じ得ない。