
石破茂首相とトランプ米大統領による初の首脳会談は、成功を収めました。神に選ばれた者同士――。両氏の個人的信頼関係の構築が、達成できた理由とは?(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
神に選ばれた人間である
石破茂首相とトランプ米大統領による初の首脳会談は、成功を収めました。日本側の最大の目標だった両氏の個人的信頼関係の構築が、達成できたからです。
どちらもカルヴァンの影響を強く受けたプロテスタントであることが、大きく奏功しました。特に、会談の冒頭で石破氏が、昨年7月のトランプ氏暗殺未遂事件直後に撮られた、星条旗をバックに拳を突き上げる写真に言及し、
「歴史に残る一枚。大統領が、自分はこうして神様から選ばれたと確信したに違いないと思った」
と語ったことが、決定的な役割を果たしたといえます。
キリスト教の中でも、神の選びを強調するのは、長老派、改革派などカルヴァンの流れを引く人々の特徴です。神に選ばれていることを察知できるのは、神に選ばれた人だけですから、トランプ氏からすると「俺が神に選ばれた人間であることを分かっているこの石破茂という人間も、神に選ばれている」という認識になります。
神に選ばれている者は特別の使命(召命)を持ち、神に選ばれた者同士はその意味を理解するのです。筆者もカルヴァンの影響を強く受けたプロテスタントなので、トランプ氏と石破氏の心の動きが、信仰を共有する者として手に取るように分かります。