
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は激しい口論の末、会談が決裂。3月2日には欧州各国の首脳がウクライナを支援するため、有志国連合を形成する方針で一致した。トランプ氏の言動は関税政策をはじめ、安全保障にも大きく波紋を広げている。果たして本当に、トランプ氏の思惑通りに経済や地政学リスクが良い方向に向かうのだろうか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米国と他国の利害の食い違い
主要国が「米国離れ」にシフトか
米国のトランプ大統領は就任以来、矢継ぎ早に関税、対ウクライナ、ロシア、中国をはじめ数々の政策を発表した。世界の経済や金融市場、さらには安全保障に大きく波紋を広げている。
米国の世論調査によると、共和党支持者の中には、グローバル化により米国の製造業が衰退したとのイメージを持つ者がいるようだ。ウクライナ戦争や対中国に関しても、「トランプ氏でなければうまく対応できない」とみる有権者は多いようだ。それだけ、米国内ではトランプ氏への期待が大きいといえるだろう。
しかし本当に、トランプ氏の思惑通り経済や地政学リスクが良い方向に向かうのだろうか。トランプ1期目の政策を分析した研究には、トランプ関税や対中制裁、その報復は米国経済に少なからぬダメージを与えたとの指摘が多い。中期的には、トランプ氏は期待通りの成果を必ずしも実現しなかったともいえる。
対ウクライナ・ロシア・中国、関税、AI(人工知能)分野のルール策定、気候変動、対中東政策を巡り、米国とEUやアジア諸国との利害の食い違いが見受けられる。それらが深刻になれば、世界の主要国が「米国離れ」にシフトすることも考えられる。