「ちょうどいい酔い方」
酒を楽しむ新常識
近年、健康志向が浸透する中で、コロナ禍を契機にアルコールとの適切な距離を取る傾向が強まった。単にアルコールを摂取するのではなく、自身の趣味や会話を楽しみながら、心地よい酔い方を求める消費者が増えている。
例えば、自宅でビールを2~3本飲んでいた人が、2本に減らし、もう1本は軽めのチューハイにするなど、余暇の過ごし方や翌日のコンディションを考慮した飲み方が定着しつつある。
この流れは外食シーンにも影響を与えている。クラフトビールや国産ウイスキーの人気が高まり、一杯の価値を重視する傾向が強まっている。単に大量に飲んで酔うのではなく、適量を楽しみながら心地よく過ごすことがトレンドとなっている。
こうした変化を受け、アサヒビールはコロナ禍に「スマートドリンキング」というコンセプトを提唱し、多様な飲み方に対応する商品を展開している。アルコール度数の低いビールや、低度数でも美味しく楽しめる商品の開発が進んでおり、メーカー各社もこうした外的環境の変化に適応している。
なぜビールメーカーは
新ブランドを投入するのか?
酒税統一を控え、ビールメーカー各社は新ジャンルのブランドを維持しつつ、今後成長が見込まれるスタンダードビール市場でのシェア拡大を目指している。
従来の主要ブランド(アサヒの「スーパードライ」、サッポロの「黒ラベル」、キリンの「一番搾り」)だけでは競争が難しくなっており、新ブランドの投入が相次いでいる。
例えば、アサヒは「ザ・ビタリスト」、キリンは「晴れ風」といった新ブランドを展開し、サントリーも健康志向の「パーフェクトサントリービール(PSB)」を投入するなど、各社が積極的に市場を活性化させている。26年の酒税統一までに、各メーカーがどれだけ自社ブランドを確立できるかが焦点となる。
ビール市場では新ブランドへの投資が強化される一方で、発泡酒や第3のビールなど新ジャンル市場への投資は縮小傾向にある。ただし、その規模はスタンダードビール市場を上回るほど大きくなっており、サントリーの「金麦」やアサヒの「クリアアサヒ」などは依然として高い販売数量を誇る。
新ジャンル市場の急激な縮小は工場の稼働率低下につながり、利益に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、各社はスタンダードビール市場の拡大に注力しつつ、新ジャンルのブランドも維持するというバランスを求められている。