「1杯目からハイボール」
成長を続けるRTD市場

 プレミアムビール市場は、サントリーの「プレミアムモルツ」やサッポロの「ヱビス」などが代表的なブランドとして展開されているが、近年は苦戦を強いられている。

 背景には、スタンダードビール市場の活性化があり、「スーパードライ」や「黒ラベル」などの既存ブランドに加え、新たに「晴れ風」や「マルエフ」などの競争力のある商品が登場したことで、消費者が必ずしもプレミアムビールを選ばなくなった点が挙げられる。また、消費者の生活防衛意識の高まりも、価格帯の高いプレミアムビール市場に逆風となっている。

 こうした状況を受けて、各社はプレミアムビールの価値再提案に取り組んでいる。例えば、サントリーは「プレミアムモルツ」ブランドの派生商品を展開し、サッポロも「金のヱビス」だけでなく、紫のヱビス「プレミアムエール)」、黒のヱビス「プレミアムブラック」など、多様なバリエーションを打ち出している。これらの施策は、スタンダードビールとの差別化を図り、プレミアムビールの価値を再認識させる狙いがある。

 一方、キリンはクラフトビール市場を意識した商品を投入し、プレミアムビールと同価格帯での競争を展開している。結果として、プレミアムビール市場は「スタンダードビールからの圧力」と「クラフトビール市場の成長」の両面から攻められる形となり、既存ブランドの立ち位置を明確にする必要性が高まっている。

 ビール市場全体が長期的に縮小傾向にある一方で、缶チューハイ、缶カクテル、缶ハイボールといった低アルコール飲料のRTD(Ready To Drink)市場は成長を続けている。特に、コロナ禍以降、自宅での食事とともに楽しむ「食中酒」としての需要が増えたことが背景にある。

 また、従来のビール愛飲者がチューハイを併用するケースも増えており、特に若年層では「1杯目からハイボール」「ビールよりチューハイ」といった選択肢が一般化している。この流れを受け、各社はチューハイの強化にも注力しており、ビールと合わせた総合的な戦略が求められている。