酒は飲めなくてもいい?
変わる飲料業界の人材戦略

 人材採用という点においては、必ずしも飲料業界は追い風が吹いているわけではない。若者の中には、アルコール市場が衰退しつつあり、以前のように業務用の販路を積極的に開拓する営業活動が続くとは思えないと感じている節があるからだ。

「スマートドリンキング」のように、酒を飲めない人に寄り添うプロジェクトも進む中、飲酒できない人を採用する傾向も高まっている。これまでは飲酒経験のある人がメーンで営業活動を行っていたが、多様な人材を取り入れることで、さまざまな消費者のニーズに応える提案をしようとしている。

「このような組織の変革は、コロナ禍を契機に進んできた。 さらに職種の多様化が進んでおり、アルコールだけでなく、その他の飲料でも新たな動きが見られる」(富士経済の担当者)

 例えば「ウィルキンソン」などの無糖炭酸飲料が登場しており、お酒ではなく炭酸飲料を好む消費者層が増えている。このように、アルコール市場だけに注力するのではなく、さまざまな飲料の提案を行う機会が増えている。アルコールとノンアルコールの垣根を越えた競争関係が生まれている状況だ。

国内は縮小、海外は拡大
飲料メーカーの生存戦略

 海外展開も重要で、売り上げが大きいため、外せない戦略となっている。

 国内では人口が減少し、飲酒人口も減っている。特に高齢化が進み、これまでアルコール市場を支えてきた50代や60代の多くが年齢を重ねるにつれて、酒の量が減っている。

 したがって、国内市場は長期的には縮小していくと予想されている。そのため、国内での利益確保と価値提案、そして海外市場での売り上げ増加が企業にとっての重要な戦略となっている。

 海外市場での戦略は企業ごとに異なり、現地で製造するか、現地の企業を買収するかなどの方法がある。

 アサヒビール、サントリー、サッポロ、キリンなどでは、M&Aを活用しながらグローバル展開を進めている。国内外で優秀な人材を雇用し、企業の発展を目指しているという点では共通している。