鉄道オタクはいらない?鉄道会社が「本当にほしい人材」の条件鉄道業界で求められる人材とは? Photo:PIXTA

新卒採用において、企業はどのような人材を求め、どの事業に注力しているのか。本連載では、各業界をリードする企業がどのような採用戦略を打ち出しているのか分析し、今後の動向を探る。第9回では「鉄道業界」を取り上げ、業界の専門家に最新のトレンドや企業が求める人材像を聞いた。(ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)

徐々に薄れつつある
交通系ICカードの存在感

 日本の鉄道業界は今、JRと私鉄という形で大きく二分している。JR(旧国鉄)は東京―大阪間などの都市間輸送が主力なのに対し、小田急電鉄や京王電鉄といった私鉄は観光地を中心に地域密着の輸送を主な事業領域としている。このように、両者のビジネス範囲には明確な違いがある。

 ただし、JRも私鉄も路線を増やすのは容易ではなく、鉄道事業は成長の余地が少ない。そのため、近年は各社とも非鉄道事業、例えばホテルやマンションといった不動産開発事業に注力しているが、数少ない土地をめぐってデベロッパーとの競争が激しくなっている。

 そんな中、鉄道コンサルタントの至道薫氏は「今後、鉄道業界が成長するかぎはデジタル分野だ」と話す。

 もちろん、ヤフーや楽天といったIT業界が推進するデジタル経済圏との競争は存在する。その中で、例えばJR東日本は、累計発行枚数1億枚を超えるSuicaをはじめデジタル金融サービス「JRE BANK」を開始するなど、交通系ICカードがデジタル分野で大きな可能性を持つことを示した。

 一方で、その競争に勝つにはさまざまな課題が残されている。特に決済分野では、QRコードやクレジットカードにシェアを奪われつつあるため、交通系ICカードの存在感は徐々に薄れつつある。そんな状況の中で、交通系ICカードはどのような未来を切り開いていくのか。