
申告期限に間に合わなかったらどうなる? 医療費ならなんでも対象? 家族の中で誰が申告するのがお得? 『医療費の裏ワザと落とし穴』293回では、医療費控除の基礎知識を改めておさらいし、払い過ぎた税金を取り戻すために「損しない技」をお届けする。(フリーライター 早川幸子)
医療費控除の対象になっても
自分で申告しないと利用できない
昨年1年間に病気やケガをして、医療費がたくさんかかった人は「医療費控除」でお金を取り戻せる可能性がある。
とはいえ、今年(2025年)の確定申告の受付期間は、2月17日から3月17日までで、申告期限まで10日を切っている。「申告したいけど、忙しくてまだ準備ができていない!」と焦っている人もいるのではないだろうか。
でも、諦めることなかれ。申告期限に間に合わなくても、税金を取り戻すための「還付申告」は、申告事由があった年の翌年1月1日から5年以内なら受け付けてもらえるからだ。
医療費控除は、医療費が高額になった人の税負担を軽減する所得税の仕組みだ。文字通り、所得税は所得にかかる税金だが、収入が同じだからといって所得税額も同じというわけではない。
例えば、扶養家族がたくさんいる人は、独身の人よりも生活費や教育費がかかる。地震や津波などの自然災害にあうと、家や車などの財産に損害を被ることもある。収入が同じでも、その人の置かれている状況によって税金の負担能力は異なるため、個別の事情に応じた「控除」を設けることで税負担の公平が図られている。
この控除の一つが医療費控除で、病気やケガをしたり、出産したりして、1年間に支払った家族全員の医療費が10万円を超えた人が利用できる。総所得金額等が200万円未満の人は、医療費が10万円に届かなくても、総所得金額等の5%を超えると申告可能だ。
【申告対象の医療費の条件】
・その年の1月1日~12月31日までの家族全員の医療費
・支払った医療費うち10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超える部分で、最高200万円まで
・公的な医療保険〔健康保険など〕や民間保険から補てんされたお金がある場合は、それも差し引いた金額
所得税の確定申告は、1年間の課税所得と納税額を確定させる手続きで、年収48万円を超える自営業者やフリーランスなどの人に申告の義務がある。一方、会社員や公務員などは毎月の給与やボーナスから税金が天引きされており、勤務先の年末調整で一応の納税手続きは完了している。
だが、医療費をどれくらい使ったかは個別の事情で、勤務先では把握できない。そのままにしておくと、本来支払うべき所得税よりも多く税金が徴収されている可能性もあるため、医療費控除の対象になる人は給与所得者でも確定申告して払い過ぎた税金を取り戻す必要があるのだ。