控除対象の医療費は全て計上し
収入の多い人が申告するのがお得

 医療費控除は、年収から1年間にかかった医療費を差し引くことで課税所得が引き下げられ、結果的に所得税が安くなるというものだ。控除額が多くなるほど確定申告で取り戻せるお金が多くなるので、申告対象として認められている医療費は余すことなく計上するのが節税のポイントだ。

 とはいえ、医療費ならなんでも控除対象になるわけではない。原則的に、申告対象になっている医療費は治療目的や医師の指示で使った費用で、予防や美容・個人の事情で利用したものは対象外だ。

 例えば、予防のためのビタミン剤や漢方薬、予防接種の費用、美容整形の費用、個人の都合で使った入院時の個室代などは認められていない。だが、控除対象の医療費の範囲は意外に幅広く、病院や診療所に支払った医療費以外のものでも認められるケースがある。

【医療費として認められているもの】

・病院や診療所に支払った医療費の自己負担分
・調剤薬局で支払った薬代の自己負担分
・医療機関までの交通費
・ドラッグストアなどで購入した市販薬
・不妊治療や人工授精の費用
・仕送りしている子どもや親の医療費
・医師の指示で行った鍼灸治療
・レーシックの手術代
・介護中の親の紙おむつ代

 このように、医療機関までの交通費や、介護に必要なおむつなど、純粋に医療費ではないものも認められている。

 また、医療費控除は世帯単位で手続きするので、申告者本人の医療費だけではなく、同一生計の家族のものもまとめて申告ができる。例えば、一人暮らしをしている子どもに仕送りをしていたり、高齢の親の生活費を負担したりしている場合は、その医療費もまとめて申告できる。申告する際は、控除対象になっているものは漏らさずに計上するようにしよう。

 もう一つ注意したいのが、家族の中で誰が申告するかだ。医療費控除は、同一生計の家族の医療費をまとめて申告できるが、同じ家族の中でも所得の高い人が申告した方が還付金は多くなる可能性が高いからだ。

 所得税の課税方法は「超過累進税率」といって、課税所得が一定額を超えると、その超えた部分に一段階高い税率がかけられる仕組みが採用されている。現在、この税率は5%~45%の7段階となっている。

 例えば、課税所得400万円の人の場合、195万円未満の部分は5%、195万円~330万円未満の部分は10%、330万円~400万円の部分は20%というように、所得が一定額を超えるごとに、段階的に高い税率が課されるようになっている。

 この仕組みが還付金にも影響しており、医療費の総額が同じでも、所得の高い人が申告すると還付金が多くなる。家族の中に納税している人が複数いる場合は、収入の多い人が申告した方がお得だ。