この10月から、パートやアルバイトで条件を満たした人の社会保険が、従業員数51人以上の企業で適用されることになった。これまでの101人以上から範囲を拡大した形だが、雇う側も雇われる側も労働時間を調整して適用を逃れるケースはなくならないだろう。『医療費の裏ワザと落とし穴』第286回は、今回の制度改正の内容を紹介し、太平洋戦争時に導入された「被扶養者制度」が招いている不公平な状況について考える。(フリーライター 早川幸子)
目先の手取りは減ってしまう!
労働時間を調整する企業も
2024年10月1日から、社会保険の適用範囲がさらに拡大された。
パートやアルバイトなどの短時間労働者で、週の労働時間が20時間以上などの条件を満たした人の社会保険は、これまでは従業員数が101人以上の企業で適用されていた。
これが、この10月からは従業員数51人以上の企業にも拡大されることになったのだ。厚生労働省の試算によると、今回の見直しによる社会保険の新規加入者は約20万人になると見込まれている。
社会保険に加入すると、病気やケガをした時に手厚い保障を受けられ、老後にもらえる年金額も増える。メリットは大きいのだが、制度改正を手放しで喜ぶ人ばかりではない。
社会保険の適用対象になると、給与から保険料が天引きされるので、目先の手取りは減ってしまうからだ。労働者の保険料を折半する企業側の負担も増える。そのため、社会保険が適用される「年収の壁」を超えないように労働時間を調整して、あえて「適用逃れ」をするケースもあるようだ。
社会保険には、なぜこのような「年収の壁」があるのだろうか。今回の制度改正の内容を確認しつつ、労働者のための健康保険に「年収の壁」が生まれた歴史的背景を探ってみたい。