日本の象徴とも言える富士山が「世界文化遺産」に登録されることが、ほぼ決定的な情勢となった。ゴールデンウィークさ中に報じられたこの明るいニュースに、日本中が沸いた。今回の報道を機に、改めて富士山に興味を持ち、登ってみたくなった人も多いのではなかろうか。世界遺産となる富士山の登頂にはどんな心得が必要なのか、登山をする体力に自信がない人でも富士山を楽しめるスポットはないか、そして知っていそうで知らなかった富士山のトリビアとは? ブームに乗り遅れないためのお手頃ガイドとして、富士山の魅力を全方位分析する。(取材・文/フリーライター・宮崎智之、協力/プレスラボ)

「日本の象徴」が悲願の世界遺産登録
ゴミ問題に泣かされた紆余曲折の経緯

 富士山の世界遺産登録がほぼ決定――。ゴールデンウィークさ中に報じられたこのニュースに、日本中が沸いた。

 標高3776メートル、日本最高峰の独立峰である富士山。「あたまを雲の上に出し」の歌詞でもおなじみの『ふじの山』は、日本人なら大人でも子どもでも歌える有名な童謡だ。それほど富士山は、日本の象徴として古くから我々の心に根付いてきた。日本人のアイデンティティそのものだったと言っても、言い過ぎではないだろう。

 その富士山が、4月30日、世界遺産登録の審査を行っているICOMOS(イコモス)から、「『記載』が適当」との勧告がなされた。このニュースが、喜ばしくないわけがない。逆に、国内には世界遺産に登録された景勝地がすでに多くあるにもかかわらず、なぜ日本の象徴たる富士山がこれまで選に漏れてきたのか。その背景には、童謡の歌詞から受ける牧歌的なイメージとは裏腹に、「大人の事情」があった。

 富士山はもともと「自然遺産」としての登録を目指していたが、2003年に国内の候補地として漏れた経緯がある。理由としては、ゴミや産業廃棄物などの不法投棄が挙げられるが、理由は他にもある。