いまだパレスチナのガザ地区で戦争が続くパレスチナ・イスラエルの情勢は、第47代米国大統領に就任するドナルド・トランプ氏によってさらに混迷を深めることは必至だ。特集『総予測2025』の本稿では、トランプ氏が登用する新閣僚人事を読み解き、今後の中東情勢の行方を占う。(慶應義塾大学法学部教授 錦田愛子)
トランプ氏再選後の中東・パレスチナ
米国のイスラエル支援が加速
第47代米国大統領にドナルド・トランプ氏が選出された。前例に逆らい、独自路線を貫く保守外交を進めた「トランプ劇場」は再開するのか。それは、いまだパレスチナのガザ地区で戦争が続くパレスチナ・イスラエル情勢にどのような影響を与えるのか。国際連合や国際法を中心とした国際秩序は維持されるのか。先行きは混沌としている。
2024年は激動の年となった。イスラエルとハマースら武装勢力との間で始まった戦闘は、中東各国に波及し、4月にはついに軍事大国であるイランとイスラエルが直接砲火を交える事態となった。双方の本国を狙った攻撃は10月にも繰り返され、これが新しい常態となったことを示唆した。
レバノンでは、30年以上にわたり対イスラエル攻撃を率いてきたヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長が殺害された。イスラエルにとっては宿敵をついに排除した大金星といえる。ハマースの主要な幹部も、その多くが殺害された。イスラエルはこの戦争を通して北の脅威をある程度排除し、当初掲げた「ハマースの殲滅」という目標を現段階においては達成しつつあるように見える。
次期トランプ政権は、こうした動きを後押しすることになるだろう。
次ページでは、トランプ氏が閣僚に登用した人物と登用しなかった人物を解説すると共に、さらに混迷を深めることが確実視されるパレスチナ自治区ガザを中心とするパレスチナ・イスラエル紛争や、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の行方について切り込んでいく。