本人が発達特性に気付いていない場合
どのように対処するか

 ニューロダイバーシティ活用の体制を発足させるまでもなく、職場では、実は発達障害と診断されるほどの状況でありながらも、本人がそれに気付かないまま働いているということは多々あるだろう。

 人口の約1割が何らかの発達障害があると言われており、決して珍しいことではないが、特性が業務上の困難につながり、本人も周囲も原因がわからずストレスを感じ、軋轢が生じることもある。メンタルヘルスに大きな影響が出ていない段階に限るが、その人たちにはどのように対応すべきか。

 職場で誰かが困難を抱えている様子に周囲や上司が気づいたら、まずは上司が本人の得意、不得意を見極めることから始めるのがいいと木村氏。例えば、指示が重なると混乱する、時間管理が難しい、即応の会話が苦手といった特徴があれば、「能力がない」「努力が足りない」と捉えず、脳の特性による「別の働き方」が必要な可能性を考慮する。個人面談などで、「どういう環境だとパフォーマンスが上がるか」「どんな業務が得意か」を本人に尋ねる。

「発達障害なのではないか」と直接指摘するのは控えるべきだと木村氏は助言する。診断に基づかない推測は関係性を悪化させ、パワハラと受け取られる可能性もある。あくまでも業務パフォーマンスの向上という観点から、本人の得意を活かし、不得意をサポートするアプローチを取る。

 また、関係性の構築を重視し、できたことにはしっかり感謝の意を示し、できていないことや改善すべき点を率直に明確に伝えることが何より大切だと木村氏は強調する。もちろん、これは本来ならばすべての職場での関係性に言えることであろう。そして、発達特性のある人と協働する際の上記の工夫をそのまま応用すればよい。

 曖昧な指示はパフォーマンス低下の原因となるため、5W1Hを明確にしたり、一度に複数の指示を出したりせず、タスクの優先順位を決めれば、本人の能力の発揮を助けられる。特性に合わせた業務の再設計を検討し、調整・交渉といった苦手な部分を分離し、得意な専門業務に集中できる環境を整える。定期的な短時間のミーティングを設け、タスク達成状況を確認し、困りごとに早期に気づけるようにしておく。人事部門が仲介役として、本人の特性に関する理解を深める支援を行えればなおよい。

 こうした発達特性への配慮は、実は全ての従業員の働きやすさにつながる。特性のある人材を適切に配置し、能力を最大限発揮できる環境を整えることは、組織の競争力向上にも直結するのだ。

 次回はIT領域で、“国内最先端”と言われる実績を出している日揮パラレルテクノロジーズの取り組みを取り上げる。