多様性を前提とした
一括採用がゴール

 現時点では、多くの企業が発達障害の特性がある人の採用を「障害者枠」として検討している。しかし、将来は変わるかもしれない。

 電通総研ではかねて障害者枠で採用を行ってきたが、将来的には枠を設けず、多様性の一つとして発達障害者を含めた人材活用ができればと考えていると佐藤氏は語る。

「課題に対してそれぞれ何ができるか、できることに着目して、そこにできる人をあてはめる。それぞれ特性や得意なところをお互いが持ち寄って活かし、補完し合っていく」(佐藤氏)のが目指すべき姿だと断言する。

 高木氏も「各人が課題に対して何ができるかという視点で協働すれば、障害の有無は関係ない。発達特性を含めて、そもそも障害があるかどうかを知らずにお互いが仕事している状態が理想だと考えている」と振り返る。

 このように多様性についての理解が経営の上層部に浸透していることが、この取り組みを支える基盤となっているようだ。今後は、成功事例を電通グループ全体に共有していくことも視野に入っている。

 キャリアパスや給与面についても、現在のワークサポート部とは専門性が異なるため、特性や能力に応じた設計を検討している。山中氏は、「あらかじめ給与水準を決めるのではなく、持っている知識をどう発揮してもらうかという視点で位置づける」と話し、また、「長く働いてもらうためにも、職種にあったキャリアパスを提供することも重要」と言う。

 高木氏は、「一般的には、会社からゼネラリスト的なスキルを求められがちであり、スペシャリストにしても同様だ。本当にそれでいいのかを考え直すきっかけになるかもしれない」とも話す。「全員がゼネラリスト的能力を持つ必要はない」という認識が、真の多様性を受け入れる職場づくりにつながる可能性もある。