適応障害とは、生活のなかで何らかの外的なストレスがあって、3カ月から6カ月経っても慣れることができず、日常生活に支障をきたすほどの心身の症状が出る病気です。診察室では、「明確なストレスの原因があって、どうしても慣れることができず、そのストレスのもととなっていることについてずっと考えてしまうような状態です」と説明しています。

 分かりやすい1例が、五月病です。

 4月に入社して、ゴールデンウィーク頃までは前向きに頑張るものの、新卒や転職の方だと連休が明けた頃から任される仕事が増えたり、メンターから離れて仕事を行うようになったりして仕事の負荷が増えてきますよね。そうすると、ストレスがたまって、徐々に体調を崩していく……というのが五月病。新しい環境での負荷に慣れることができずに心身の不調が出てくるわけですから、医学的にいえば、まさに適応障害なのです。

 適応障害の特徴の1つは、ストレスの原因が明確であること。人によって原因はさまざまですが、明確な原因があって、それに対する過剰な反応が起こっている状態が適応障害なので、ストレスのもとから離れると逆に体調は良くなります。これも、適応障害の特徴です。

 ビジネスパーソンの場合、適応障害の原因で多いのは、職場の人間関係、過重労働、仕事のミスマッチです。なかでも特に多いのが、人間関係です。対上司、対同僚のほか、最近ではカスハラ(カスタマーハラスメント)というワードがすっかり定着してしまったほど、顧客からのクレームや言動に悩んでメンタル不調に陥る人も増えています。

 一方、転職市場は売り手市場になっているなか、以前に比べると自分の希望する仕事を選びやすくなってきているため、仕事のミスマッチが原因で適応障害になるケースは減っている印象があります。それでも、入社直後や異動直後、転職したばかりの人が、自分がそれまでやってきたこととは違う仕事を任されたり、新しい企業文化になじめなかったりして心身が疲弊することはよくあるパターンの1つです。

責任感が強く相談下手だと
適応障害になりやすい

 先日、ある企業で産業医面談を行ったときのこと。

 その社員の方は、自分がまかされているあるプロジェクトのことを考えると泣いてしまうといって、面談の場でもずっと涙を流していました。ただ、泣きながらも「投げ出すわけにはいかないので今は休めません。働きたいです」と繰り返していて、今は休みたくはない、このままプロジェクトをやり遂げたいという意思は明確でした。