人事の方を経由して職場での様子を確認したところ、仕事中に涙が出たことはないという話でしたので、このときには上長にフィードバックして、フォローしてもらうことを条件に一旦様子を見ましょうということになりました。
この方のように、つらくてもギリギリまで頑張ろうとしてしまう方は多いです。
適応障害は誰しもなる可能性のある病気ですが、特に、責任感が強くてまじめな方、周りの人に相談したり助けを求めたりするのが苦手な方がなりやすいように感じます。そうした方は、すべてを自分1人で抱え込んでしまいやすく、自分のキャパシティを超えたときに心のバランスを崩してしまうのです。
また、その人の性格だけではなく、周りの協力を得られにくい職場でも、1人で抱え込みやすく、適応障害を発症しやすい傾向があります。
体力、気力に自信があっても
適応障害に陥るリスクはある
適応障害が生じる原因は人によっていろいろですが、表れる症状はだいたい一致しています。私が診察のときに必ず聞くのは、次の4つです。
「食事はとれていますか?」
「眠れていますか?」
「休みの日はどうやって過ごしていますか?出かけていますか?」
「土日にも気分が落ち込むことはありますか?」
食欲がなくなることは健康な人でもときにあると思いますが、体重が減るほど食事がとれなくなるのはやはり問題です。
実は私自身も、クリニックを立ち上げるときに適応障害になりました。産業医の仕事を続けつつ、併設するフィットネスジムも同時に立ち上げたので、やるべきことも考えるべきことも多すぎて、参ってしまったのです。
当時は、医師である自分がフィットネスジムまで立ち上げるなんて、うまくいくわけがないじゃないか、と不安にもなりましたし、ノウハウはないので初めてのことの連続。「明日は何をしよう?」「どの問題から片づけよう?」と一日中絶えずフルに頭を働かせている状態になり、夜は眠れず、食事量も減って、気づけば体重が10キロほど落ちていました。
ただ、自分自身も“患者”になったことで、いい勉強になりました。自分でいうのもなんですが、体力にも気力にも自信のあった自分でも適応障害になったのです。やっぱり誰しもなり得るのだと分かりましたし、この経験がきっかけで、睡眠の大切さが身に染みて、眠れないときには素直に薬に頼ろうと睡眠薬を使うようになりました。